20211106 水戸街道のかけらを拾う
【旧水戸街道: 金町関所~松戸宿~小金宿】
パンデミックも下火となり,この隙に,と出かけようと思ってたが,前日友人らと遅くまで飲んだせいか,起きたのは昼頃.
今日は水戸街道を歩こうと思ったのだけれど,これは本当に少ししか進めないなぁ.
まぁ,僕の場合,ウォーキングというより,旅気分が目的なので,適当に楽しめればいいのだ.
水戸街道は前回,金町の関所で江戸川を眺めて終わっているので,渡しに乗ったつもりで,対岸の松戸から再開.
松戸駅から昼飯を食いに「戸定そば 幸 (さち)」に向かった.
「戸定 (とじょう) 」というのはここらへん,旧松戸小字の地名だそうだ.
道に面した小部屋には「新そば打ち始めました」と書いた紙が貼ってある.待ちながら眺めていると,職人が黙々と石臼で蕎麦を挽いている.
ここは幻のそば「千葉在来」を使用している.
戸定そば 750 円
粗挽き田舎 (太打ち) 850 円
二種せいろ 1050 円
鴨せいろ 1350 円
鴨天せいろ 1490 円
鴨焼き 1000 円
など
香り高いそば茶を飲んでいると,注文した田舎そばの鴨せいろはしばらくしてきた.入り口で挽いていた皮つきの実,玄そばを使ったものだけれど,色は存外黒くない.八割蕎麦かな.
まず,そばを何もつけずに食べてみる.腰が強く,口に含むとふわりと甘い香りがする.田舎そば,といいつつ,だいぶ上品な味.
北海道産の平飼いの鴨は柔らかく,つゆに旨みが染み出している.
味が濃いので浸けるのは少な目に.
最後,つゆにそば湯を入れて飲んでみたら,かなり美味かった.高血圧が捗るぜ.
戸定そば 幸: ★★★★☆ (店の雰囲気もよく,ウマい)
しかるのち戸定邸へ.
戸定邸は徳川慶喜の異母弟にしてに水戸藩最後の藩主,徳川昭武の住宅で,明治時代の徳川家の住まいがほぼ完全に残る唯一の建物.国重要文化財.
慶喜と昭武は仲が良く,慶喜もよく遊びに来たそうだ.
受付から廊下に進むと,左にいきなり蔵がある.石造の壁にぽっかりと空いた穴を覗き込むと,結構広い.
さらに廊下を進むと表座敷に出る.広く開放的な座敷の南側には,日本の最古の洋風庭園が広がる.
芝生の向こうに木立が立ち (現在再現のため育成中), 庭石は置かないスタイル.純和風建築との対比が面白い.
フランス語が堪能で,パリ留学経験もある昭武のセンスが生かされているのだろう.ガイドは,外国から雑誌を取り寄せたり,ナポレオン3世と親交があったりしたんですよ,と付け足した.
表座敷の欄間や釘隠しには葵の意匠.なお,釘隠しと言っても木を組んで建てられており,釘は使われていない.
シンプルなデザインであるが,どの面も真っ直ぐな木目が見える四方柾目柱,杉一枚の扉など,素材はいいものを使っている.
表座敷から細い廊下を通って,中座敷・奥座敷と進む.廊下の折れ曲がりが多く,至る所から庭が見える.
風呂は少し面白い.当時は湯船はなく,掛け湯のみだったので,脱衣所から下がったところに洗い場がある.
戸定邸を後にしながら,昭武のことを考える.
昭武がパリ万博に派遣されている間に明治維新となり,江戸幕府は瓦解する.今放映されている渋沢栄一 (一緒にパリ万博に行った) の大河ドラマでは,その時の昭武の心境が描かれているのかなぁ.
さて,順序は逆かもしれないが,前回の終点である,金町の対岸へ.
ここは矢切りの渡しの乗り場である.
あれ?矢切の渡しって,柴又じゃないの?
調べるとどうも,松戸から江戸川を渡る船は三つあったようだ.
(1) 小向の渡し: 葛飾区金町 - 松戸市納屋河岸
(2) 金町・松戸の渡し (松戸の渡し): 葛飾区金町 - 松戸市上矢切
(3) 矢切の渡し: 葛飾区柴又 - 松戸市下矢切
水戸街道を繋ぐ松戸の渡しは関所があり,江戸との出入りをチェックされていたが,生活通路であった小向の渡しと矢切の渡しには関所はない.
ちなみに,松戸の渡しは「上矢切の渡し」と呼ばれていた時期 (1877-1910 年) があり,それに呼応して矢切の渡しは「下矢切の渡し」と呼ばれることもあった.このために,今回来た上矢切の渡しが,矢切の渡しと書かれていた模様.
あぁ,分かりづらい.
マンションの一階に設置された本陣跡の碑を眺めてから歩き始める.
今日は始まりも遅かったし,戸定邸で時間も使ったので,小金宿までで留めておくつもり. 7 km 程度.
Googleマップを見ながら,旧水戸街道を歩いたが,驚くぐらい江戸感なし.
大通りだったり,住宅街だったり.なぜ自分が今ここを歩いているのだろうという疑問が湧いてくる.
数少ないスポットが馬橋.
馬橋駅の東の方で,長津川という細い川にかかる橋が「馬橋」.かつては鞍の形をしていたので,馬橋と呼ばれているらしい.
もう一つの見所は小金宿に入ったところにある「玉屋」.
民家のため,内部は公開されていないが,江戸末期に建てられた旅籠で,今回の旅で江戸を偲ぶことのできる数少ないスポット.
そうこうするうち,今回の旅の終着地,北小金に着いた.駅前でも飯屋のまばらな,派手さのない住宅地.
探せば小金宿の看板などがあるらしいのだけれど,もう暗くなってしまったので,次回ここから再開するときの楽しみに取っておくことにした.
夕食は「虎昇」なるお好み焼き屋.
自家製キムチやマッコリなど韓国料理もあるので,にこにここちらを見ている店主に聞いてみたら「いや,鉄板があるからねぇ.何かできないかなってサムギョプサル (韓国焼肉) 始めて.肉があるなら,野菜もってね」.
なんとも分かりやすい.
お好み焼きはなかなかうまかった.
虎昇: ★★★☆☆ (おいしかったけど,特徴に乏しい)
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