20220226 千葉の南国
【館山】
昼前に車で都心を出て、館山に向かう。
アクアラインが混んでいて、予定の一時間半を超えて二時間ほどで館山に着いた。
道の両脇にはヤシの木が植えられ南国を演出しているのだけれど、木の手入れは良好とは言えず、館山市が苦戦しているのを感じる。
昼食は季の音 (ときのね) という店で、千葉県産の東の匠ポークとやらのしゃぶしゃぶ 2100 円成を頂いた。
肉はもちもちしていて味が深く、野菜と合う。煮込んだレタスは肉の旨味を引き立てている。
さらに締めのきしめんでは、木更津金田の焼ばら乾海苔の香りにはっとさせられる。木更津が海苔で有名なことは知らなかったな。
掘りごたつの和室には石油ファンヒーターが焚かれ、食後にお茶を飲んでいると眠くなってくる。永遠にここで……。
惜しむらくは古民家を使っているのだけれど、中はモダンというか、チェーンの居酒屋みたいなこと。
大人数の会食に向いているかも。
それを除けば足湯もカフェもあるし、のんびり過ごすのによさそう。足湯には、タオルまで完備している。
季の音: ★★★★☆ (アクセスが悪いのが残念)
しかるのちに館山城へ。復元された天守閣の中はビルになっていて、一階に八犬伝博物館がある(撮影禁止)。
博物館といっても、小さな部屋に①馬琴について、②江戸の町での八犬伝、③現代の八犬伝と三部構成でこじんまりと展示されているだけで、20 分ほどで見終わってしまった。
南総出身としては、八犬伝は読まねば、と思っている。で、思っているだけで人生が終わりそうなので、概要を知ろうと思って来たのだが、博物館はちと物足りなかった。八犬伝、登場人物が多いから、それを把握するだけで、一苦労なんだよなぁ。博物館では、信乃と現八が屋根の上で戦ったシーンはみんな大好きなんだな、ということは理解した。
その後天守閣の上の望楼 (展望台) に登った。
海と山。向こうには富士山まで見えて、晴れ晴れとした気分になる(肉眼では見えましたが、写真では厳しい)。
自衛隊の基地があるのは知らなかったなぁ。
風は強いが、春の気をはらみ、寒くはない。
館山湾を囲む町は意外と広くて驚く。あんまり栄えていない印象だったので、町がもっと小さいと思っていたのだ。
館山民の皆様,スミマセン。
館山、いいところだと思うんだけどなぁ。何だろう、この,パッとしない感じ……。
いやほんと,スミマセン。
八犬伝博物館を含む館山城のチケットは 400 円で、城の麓にある館山市立博物館にも入れる。
これがえらいよかった。
八犬伝博物館が小規模だったので、舐めていたら、30 分ではとてもとても見切れなかった。
しかもすごく面白い(民族展示室の説明が方言なのがぐっとくる)。
里見氏は清和天皇から連なる由緒正しき家系だということや、里見水軍と言われる軍隊を持っていたこととか、全然僕、知らなかった。
しかも、安房里見氏しか知らなかったけど、安房に来る前は、群馬県高崎市のあたりにいたらしい。
清和天皇ということは、源頼朝が安房に逃げてきたのも里見氏を頼ってのことか?と思ったら、里見氏が台頭する前に安房の西を治めていた安西氏(安房の西で安西氏、らしい)の安西景益と頼朝が幼少期に仲が良かったとか……。
そして鎌倉から安房に……などと見ていたら、全然時間足りないよ!
何で僕、子供の頃、歴史、というか社会科嫌いだったんだろう?!
地理とか歴史とか、まさに旅じゃんか。そういえば英語も嫌いだったなぁ。子供の頃、もっと旅に出かけていれば、違う人生を歩んでいたのだろうか、と遠い目。
二階には、江戸時代の館山の民家が実物大で再現されている。敷地内に母屋以外の建物を配置するのは、南方系民家だというビデオも流れていて、面白い。千葉を理解するには、黒潮を理解しないといけないのかなぁ。
「あのう、申し訳ないんですけれど……」
一人で「ほんほん」「なるほどなぁ」などと頷いていたら、係の方が声をかけに来た。閉館である。
次はもっと時間をかけて見に来よう。
館山は同じ千葉でも、銚子のように経済が栄えている印象ではない。歴史がウリだろうか。
お勉強すると、もっと楽しめそう。
宿に向かう途中、晩酌用と土産用に酒を購入。
勝浦の鳴海(なるか)特別純米生原酒は、千葉県産の飯米「ふさこがね」を使用。
君津の福祝特別純米は無濾過生原酒を購入。売り場では無濾過生原酒って書いてあったけど、ボトルには生酒としか書いてない。
夕飯の予約の時間になりそうだったので、宿に車を置き、徒歩で「巴寿し」へ行った.
おまかせコース 2860 円を注文。
地魚寿し、サザエのつぼ焼、さんが焼が入っている。寿しはヒラメ、キンメ、サワラ、タチウオ、カンパチ、ブリが二貫ずつ。追加でこの店の名物、ブダイの赤漬け寿司も頼んだ。
酒は鴨川の寿萬亀の「鯨の浜」。純米吟醸生貯蔵酒。すっきりしていて飲みやすい。
食べ物が来たが、どれも旨い。魚が新鮮なのだろう。
寿司のネタは弾けるような歯触り。どっしりとした甘味だったり、爽やかな香りだったり。
大体ね、地魚って響きが好きなんだよ。
今、ここにいる!たまたまここにいるから、たまたま目の前にある、こいつ!呉越同舟、一期一会。そういう悦びに満ちている!
まぁ、どうでもいいけど。
キンメ、サワラ、タチウオは軽く炙られていて、変化を与えている.
炙りナントカって、好きだな。軽く火を通してあるだけだから、生っぽいところと、焼かれたところ、更には少し焦げたところもあったりして、東海道の京から江戸への道のりを一口で味わうような興奮。
噛み締めるほどに旨味が出てくる.酢飯は抑えめの味で,魚を支える脇役に徹している.
煌びやかな役者たちと名脇役.口の中に入れると,はらりと酢飯が身をはだけ,魚たちの持つ三者三様の味わいを受け止める.
そうだ,これは魚の八犬伝なのだ!
僕、疲れてんのかな。
ちょっと物足りなかったので、かんぴょう巻きも頼んだら、さすがに満腹になった。
巴寿し: ★★★★★(うまい寿司と酒とその他もろもろで 3000 円台!素晴らしい!)
宿スターダストまで歩いて 7 分程度。
そもそも今回の旅は、この宿を決めるところから始まった。さすがに最近、旅のしすぎで金がないので、貧乏旅行をすることにしたのだ。
というわけで、素泊まりで 2500 円!じゃらんだと 3000 円だったのだけれど、宿に電話をしたら、2500 円でいいと言われた。
宿の外にはダイビングのドライスーツが何枚も干されていた。
チェックインの時「今日は風が強くて大変だったでしょう」と言われた。
「海の近くだから、いつも強いのかと思いました」
「いえいえ、穏やかな日の方が多いんですよ……」
建物自体は新しくはないが、ベッドも、共用の水回りも清潔で居心地がいい。
六部屋あって、廊下には子供の大きな声も聞こえたが、僕の部屋は静かで、のんびりできた。
談話室には水道・冷蔵庫・電子レンジ・電気ポットがあり、無料のインスタントコーヒーも置いてある。
ちなみに、アメニティは一切ないので、タオル・歯ブラシ・寝巻きは持参。
寝巻きまでは気が回らなかったので、明日着る服でベッドに。
八犬伝の小冊子は、館山市立博物館が作っているだけあって、薄いのにかなり充実の内容。
登場人物もエピソードも多すぎる八犬伝の足がかりとするか。
夜は夕方買った鳴海をナイトキャップに。
飯米だけあって雑味が多いのだけど、僕好み。
大吟醸の洗練された香りもいいけれど、田舎っぽい酒を飲みながら、ごうごうと海を渡る風の音を聞く夜も、乙なものですよ……。
0 件のコメント