20211213 何もなくとも道はある

【小川町@埼玉】


朝食は昨日と一緒の内容.うまい,うまい.


カワラホテル: ★★★★☆ (部屋は狭くてビジネスホテルみたいなので,日帰りで利用するのもいいかも)


部屋で情報収集していて,今日行こうと思っていた見晴らし公園も吉田家住宅も月曜が休みなことに気づいた.


しまったぁあ.

街歩きを今日に回すべきだった…. 


仕方ないので,神社を参拝することにした.

途中,創業 1791 年の小松屋本店という菓子屋で,つる,という菓子を買った.あんこの入った黒糖饅頭のようだ.創業時の製法を守っているという.皮が厚く,饅頭というより密度の濃い蒸しパンのような感じ.甘みは控えめで素朴.

総鎮守の八宮神社は中国風の彫刻が施され,見応えがある.



末社の青麻 (あおそ) 三光宮は,足の神さまと書いてある.八宮神社とともに埼玉県指定有形文化財.やはり中の本殿は彫刻が見事である.

御朱印が欲しかったのだけど,社務所を兼ねていると思しき公会堂の張り紙には,日曜・祝日しか絵馬を売っていないと書いてあった.呼び鈴もないし,ドアも閉まっているし,これは諦めるしかないなぁ.

神社を後にして,大聖寺という寺に向かうことにした.


今日も天気がいい.

畑,空き地,民家…….

空には雲ひとつなく,向こうの山の紅葉が映える.


昨日の道の駅の前を通ったので,地元の飲み物でもないか寄ったのだけれど,閉まっている.


散歩日和ではあるんだけどな~.施設が全然開いてないんだよな~.まぁ,道さえ歩いていれば,何がしかあるものだけれどね.

大聖寺は,武蔵國十三佛,第 9 場番目を担う勢至菩薩を祀っている.六角形の法華経供養塔 (六面幢) と板碑 (いたび: 名前の通り,板状の碑で,卒塔婆の原型とも言われる) が重要文化財.供養塔は大正 2 年に国宝に指定され,昭和 25 年 8 月29 日に重要文化財となった.

http://www.smiyabi.com/sabu1300/sabu1303/sub13htm.html


寺のある山は低いのだけど,坂が急で,息が切れる.


ぜぇ,ぜぇ.

六色の仏旗はすぐそこに見えているんだけどなぁ.


本堂への道筋で,供養塔を納めている建物を見つけたが,戸が閉まってる.

横の看板には「予約をしていないと見られないことがあります」と.

こ,ここもか…!


寺務所のようなところにも人はおらず,諦めて下山し始めたが,中腹に御守りの授与所に,呼び鈴がある.中に人の気配はないので,無駄かなぁ,と思ったが,念のために押してみると,「は~い」と声がする.おお!


やにわに後方の住宅の戸が開き,白と青のチェックのエプロンを付けた女性が出てきた.


「御守りですか~?」

「イエ,御朱印を……」

「大丈夫ですよ.こちらへどうぞ~」


何と!押してみるものだなぁ,ボタン.

御朱印は書き置きではなく,手書き.嬉しい.


「アノ~,供養塔って,何曜日なら見られるとかあるんですか?」

「あぁ,いつも閉めているんですよ.見たいって言われたら鍵を開けていますけど……」

「アノ~.これから見たいって言ったら…」

「いいですよ.ちょっと待って下さいね」


言ってみるものだな.昼飯時なのに申し訳ない.


宝物庫を開けると,どーんと中央に供養塔が立っている.高さ 136 cm 以上の存在感.


「ええと,調べてらしたら,私,説明するほどでもないですけど……」

「いえいえ,ぜひよろしくお願いします」

「そうですか.今,住職がいないものですから.時々すごく詳しい方がいらっしゃって……」


控えめな方である.まぁ,国宝で重要文化財だもんね~.


石は向かいにある仙元山の割谷 (わりや) と呼ばれる石切場から持ってきた下里石 (緑泥片岩).六角形の供養塔は六つあるが,六面残ってるのは立川とここのみ.同じ人が彫ったという説もある.壁の写真を見せながら,上下の石に六つ彫られた穴に側面の石がはめ込まれているのだと教えてくれた.

供養塔も板碑も文字が深く彫られており,高度な技術を持った彫師がいたと考えられているそうだ.

撮影禁止.

https://www.town.ogawa.saitama.jp/0000000247.html

六面とも彫られた梵字はキリークで,御本尊である如意輪観世音菩薩を示している.背面にある板碑 (いたび) に彫られた梵字は阿字.

「何で阿字なんでしょうねぇ」


色は青銅のような色をしている.痛まないようにホルマリン処理をしたため,色が変わってしまったが,元はもっと青みが強かったそうだ.正面に開山希融と書いてあるのは,希融という名の住職によって開山したことを示している.現在の住職は 49 代目.


廃仏毀釈 (仏教を廃する動き.主に明治期初期) の時に村人が土に埋めて守ったという説がある.地元の人たちが大事にしてきたのだろう.


慈光寺の名前を聞いたのはこの時だ.

「こちらの住職は,慈光寺で修行していたんです.せっかく来たなら,慈光寺にも寄るといいですよ」

女性はにこにこと笑っている.


慈光寺は隣町にあり,天台宗であるが,延暦寺より古く,元は修験道で有名な寺だったそうだ.大聖寺も開山が 1340 年と大概に古いのだけれど,慈光寺の開山は 673 年と非常に古い.


去り際,小川町の有名な食べ物を尋ねると,清水豆腐と忠七めしとのことだった.

忠七めしは行きたかったのだけれど,割烹旅館二葉は月曜休み.残念.


仕方ないので,酒蔵帝松 (みかどまつ) 併設のレストラン松風庵に行き,むさし麦豚のしゃぶしゃぶ 1850 円と利酒 1000 円.蔵を改造した店は,庭の見えて明るく開放感がある.



利酒は 9 種から 3 種選べる.僕はにごり酒,プレミアム純米吟醸生原酒,鳳翔純米大吟醸を選んだ.

プレミアムはふわっとした柔らかい味.素直に飲める.やや甘みがあり,豚の旨みを引き立てる.

鳳翔は大吟醸としては地味な印象であるが,食い物と合わせるにはちょうどいい.

にごり酒が肴に合うのは言わずもがな.

肉もうまいが,たれもうまい.特に酒粕の入ったごまだれが大変深みがある.


松風庵: ★★★★☆ (蔵元で庭を眺めながら優雅に食事が出来る)


食後,時間がないのでタクシーで慈光寺へ向かった.


山道を走りながら運転手が言う.

「この道ね,幽霊が出るって有名なんですよ…….陽が沈んだら,オレは通らないなぁ.へへへ」


道すがら,道端の板碑など眺めつつ,慈光寺へ.


長くなるので,慈光寺は後編へ.

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