20211231 小田原では立ち止まらねばならない

【東海道: 国府津~小田原宿~箱根湯本】


天気は快晴.気持ちの良い大晦日である.

本日は昼にお目当てがあるので,いつもの僕よりは早目に起きる.ね,眠い….


上野東京ラインに乗り込み,前回の終点,国府津駅に至る.

こじんまりとした駅舎を出て,国道 1 号線を西へ向かう.

気温は 7 度.寒いかと思ってダウンコートを着てきたが 30 分もしないうちに汗ばんできた.


酒匂川の河口から海が見える.江戸時代,夏は人足に背負われ,冬は仮橋の上を渡ったとか.夏も仮橋じゃだめなのか.

更に歩を進めると小田原宿の入口 (江戸口見附) に着く.ばんざい!

見附跡の向かいには一里塚跡も.日本橋から二十里目.

道を歩いていると,町の名前を書いた石碑がそこかしこに立っている.城の向かいには立派な観光センターもあり,小田原の観光への力の入り具合を感じる.


しかし!こんなところで時間を費やしている場合ではない!本日の目当ては,うなぎ!

予約が取れず,売り切れるまでの営業というので,今朝は (僕としては) 早起きして来たのだ!


江戸末期に創業し,今もなお高い評価を得ている,松琴楼!

だがしかし.

そうですか.

(あと一時間寝てりゃよかった……)


道に飾られた風船を,遠い目をして眺めた.

あー,天気いいなぁ.

仕方ないので,Google を駆使して店を探し,Ryo, という魚料理の店に入った.

フロアは広く,家族連れも多い.


あぶり三種丼 2800 円は,ブリ,オシツケ,太刀魚.

塩がかかっているので,そのままで頂く.

オシツケは,アブラボウズとも呼ばれ,非常に脂の多い深海魚である.小田原のあたりでは寒い時期によく食べるらしい.


ブリとオシツケはもちろん,太刀魚も脂が乗っている.

炙られたブリは,弾力は余りなく,口の中でほろほろと崩れる.

太刀魚は淡白な魚のイメージだったけれど,もっちりとした肉は,噛むほどに旨みが染み出してくる.

炙られて香ばしくなった肉の中から,三種三様の味が広がり,中々いい.


酒は「箱根山」.すっきりとした味わいの地酒.


Ryo: ★★★☆☆ (美味しいんだけど,カジュアルな店構えの割に高いんだもん……)


飯の後は小田原城へ行った.

門は木造で再現されているが,天守閣は鉄筋コンクリートなので,木造で再建する計画があるそうだ.

ついでなんで,城内の本丸茶屋で「小田原宿」なる純米酒を一杯.癖のない飲みやすい酒.

小田原丼やうどんなどもあり,ここで飯を食べてもよかったな.

ちなみに,小田原丼は地域振興の一環として名付けられただけで,中身は多様.ローストビーフ丼もある.

一応,小田原の食材を使うことと,小田原漆器に盛ることは決められているらしい.


ここのは,焼きおにぎりに出汁をかけ,梅干しを乗せたもの.焼きおにぎり三つは,北条氏の家紋,三つ鱗の形を模している.

梅干し作りは小田原北条氏の祖,北条早雲が奨励していた.


城の後,観光案内所や資料館などに寄ろうとするも,全て休館.がっかり.


町に戻り,ぶらぶら散策.かまぼこ通りで見つけたかまぼこ屋「鱗吉」では,足湯に浸かりながらかまぼこを肴に一杯飲める.

まぁ今日はもう二杯飲んじゃったしな~.次回の楽しみを残しておこう.

さて,東海道に戻る.

1945/8/15 に空襲を受けているらしいけれど,所々古い建物が残り,雰囲気がいい.


イヤイヤ,このままでは暗くなる前に宿につけない!よそ見をせずに歩こう!やや足早に歩き始める.


が.


また,いい佇まいのものを見つけてしまった.


創業寛永十年の済生堂薬局小西本店.

「どーもー」


中に入ると,壁は一面作り付けの薬棚.店の中央にはエコバッグやハンドタオルなどのオリジナルグッズが売られている.

鉄器に漆を塗った急須には,はっとさせられた.

「はい,いらっしゃい」


奥から鶯色の作務衣を着た,人の良さそうな初老の男性が出て来た.


「随分雰囲気のある建物ですね」

「ええ,こちらね,昔日経新聞に載ったときに,カメラマンが撮ってくれたものなんですよ」


店主が指さした壁には,東海道の傍で,夕焼けを少し過ぎた空に照らされている薬局の写真が飾られている.

「手前にいるの,うちの娘なんですけど,ぼけちゃってるんですよ.何でだよって聞いたら,時間の流れを表現しているんだって.時間の流れったってねぇ」

彼がおかしそうに笑うので,僕も釣られて笑った.


店のオリジナルの菓子と漢方茶を買い,小田原を後にした.茶は店の庭で採れた生薬を使っているという.

済生堂薬局小西本店: ★★★★☆ (後で調べたら,国登録有形文化財だった.自慢しなかった店主の控えめさに,更にポイントアップ)


小田原はかなり見どころがあり,数時間ではもったいなかった.

一泊しても良かったなぁ.むしろ,東海道歩きとは別に,もう一回来ようかなぁ.


後はひたすら歩く.


17:00 過ぎてあたりが暗くなり始めた頃,箱根湯本に入り,本日の宿「ホテル明日香」に着いた.

フロントとレストランのある管理棟は,古くてしゃれっ気は少ないのに,やけに窓が広くて何だか保養施設のようだ.

一旦外に出て宿泊棟に入り,部屋に転がり込む.疲れた~.

なお,ここのホテルはフロント以外 Wifi はない.


ベッドに寝転び,ダラダラしていたが,行こうと思っていた蕎麦屋が 19:00 で閉まることに気付いた.おっと,こうしちゃいられねぇ.


慌てて宿を後にし,はつ花そば新館へ.

三組しか待っていなかったが,中々退店する客がおらず,30 分ほど外で待った.


注文は山かけそばと天ぷら,酒は白鶴上撰.

ここのそばは一滴も水を加えず,山芋と全卵で打っているのが売りである.


まずはそのままずるりと.


蕎麦の香りは控えめで,自然薯の存在感がすごい.

濃厚なとろろが優しい味の出汁にふわりと広がり,いくらでも食べられそうだ.卵を崩し,そばを浸すと,更にコクが出てくる.

自然薯と卵がかかっているので,そば自体の自然薯と卵の味は余り感じなかった.

次来た時は せいろを楽しみたいなぁ.


はつ花そば新館: ★★★★☆ (どれもきちんと美味しい.店の雰囲気も落ち着く)


「美味しかったです.ごちそうさま.ところで,ここらで除夜の鐘って言ったら…」

「早雲寺ですね.私ら子供の頃からゴーンって」

会計のお姐さんは,ご丁寧に鐘をつく仕草をしてくれた.


よし,今年は北条氏の菩提寺で鐘撞きだ!


礼を言って,早雲寺に向かった.

早雲寺は,早雲の遺言で息子が建て,今年 2021 年は開基 500 年だとか.

しかし,山門は固く閉ざされていた.

んん~.くぐり戸に何やら紙が貼ってある.


「雨天予報のためコロナ感染予防に支障の恐れがあるので除夜の鐘は中止します」


えぇ~.


とはいえ,もっともな言い分なので,すごすごと帰途に着く.


と,どこからともなくお囃子が聞こえてきた.

新年でもないのに,と思いながら音を追いかけると,白山神社というところに着いた.ナント温泉の守護神.

参拝客が一組,篝火を守っている男性が一人.

お囃子は録音だった.


傍に 50 cm 程度のお神輿風のものが置いてある.飾ってあるというよりも,単に置かれているように見える.

これは明日使うのだろうか.

参拝をしてから,近くのファミリーマートを物色すると,「はこねの地酒で飲みくらべ」などと,飲んべの体を思いやらない不埒なものが売っているではないですか.曽我の誉本醸造,箱根のしずく本醸造,箱根街道純米.


こんな売り方をしていては,消費者は長生きせんぞ.ケシカラン.


しかも許せんことに,小田原のつまみまで横で売っている.いやー,困ったなー.

未来ある若者の口に入っては,日本の将来が危ぶまれるから,やむを得ず僕が飲んでおこう.あぁ,本当に仕方がない.

宿の部屋風呂はユニットで,ヘアブラシはもちろん,シャンプーすら置いてない.フェイスタオルもないのはさすがにどうかと思い,フロントに連絡すると,取りに来いという.


「今,一人でして…」


都会では,飲食店のバイト不足が問題となっているけれど,箱根湯本でも人手が足りていないのだろうか.


風呂から上がり,部屋でくつろぎながら,そっと窓を開け,どこかの寺が除夜の鐘を撞いていないか聞いていたのだけれど,そのような気配はなかった.

早雲寺,コロナ感染で一般客を入れないのは分かるけれど,お寺の人が除夜の鐘を撞いても良かったんじゃないかなぁ.


静かに 2021 年は終わりを告げた.



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