20220101 箱根の峠はひたすらに登れ
【箱根湯本~箱根宿 (元箱根)】
朝食はバイキング.雑煮とお節があったのが嬉しい.しかも数の子まであり.箸も「寿」.
レストランの窓からは山が見えて気持ちがいい.
ホテル明日香: ★★☆☆☆ (サービスはかなりミニマム.正月だから仕方ないかもしれないが,一人でも 4 万円 (!) はさすがにいかがか)
今日の昼頃は飯どころはないので (正月なので開いてない), なんぞテイクアウト出来るものでもないかと駅前を歩いたが,時間が早すぎて食事らしきものがやむを得ずコンビニで直方体の寿司購入.
ついでに横の菓子屋「ちもと」で「湯もち」なる菓子もゲット.
早雲寺を参拝したが,本堂は 11 月の 3 日間のみしか公開されていないので,閉ざされた戸の向こうに祈る形になる.
庭の苔は霜で割れ,光を受けて梵鐘を華やがせる.
東海道へ戻り,歩き始めた.
排水溝から立ち上る湯気は,硫黄の匂いがする.ちなみに「箱根十七湯」といって,箱根は多彩な源泉が特徴らしい.
山の中を二時間半ほど歩くと,畑宿という集落に至る.箱根寄木細工の発祥の地ということで,工房が沢山ある.
間の宿 (宿場町の間の小さい宿場) ではあるが,本陣跡もある.
そしてここで!道の両脇に一里塚が!
しかもその間に,石畳の街道!
これは江戸感強いなぁ.いいぞ,いいぞ!さぁ,来い!
傍の石に座り,朝買った寿司を頬張った.石畳の向こうに塚.往時の人もこんなだったのかなぁ.あぁ,東海道!ビバ,東海道!
ただ,歩いていないと手がかじかんでくる.早く出かけろということかもしれない.
昨日,今日は一日 10 km だけれど,明日は三島まで,20 km を歩くつもりなのだ.
即ち,明日は朝から夜まで歩き通しのつもりである.
即ち,箱根関所に行くならば,今日 16:00 までに行くしかないのだ.明日には回せない.そして,東海道を歩いていて,関所に行かないという選択肢があろうか.
否!断じて!
力強く霜柱を踏み潰し,立ち上がる.
ちなみに後で,塚は再現されたものだと知った.いいんだよ.旅なんて気分なんだよ!
後は黙々と歩く.
道はかなり急で,ところどころ階段.
一分も歩くと息が切れてくる.
人がすれ違うのも難しい狭い山道のようなところもあるけれど,大名行列はどうしたのだろう.
ちなみに看板などを見ると,Google Map の案内は間違いがあるようなので,僕のバイブル「ちゃんと歩ける東海道五十三次」を参照することをお勧めする.
途中,甘酒茶屋というところに無料休憩所があったので,朝買った湯もちを食べて休憩.
白玉粉と寒天,卵白を使った餅はマシュマロのように柔らかく,中の刻まれた羊羹がアクセントを添える.
口に含むと柚子の香りが心地よく広がる.
横にちょっとした無料の資料館があったので見物.こんなところで時間を食っていたら,関所にたどり着けないではないか,と思うのだけれど,中々面白いので堪能.
時計を見て,慌てて出発……して間違えた道を進んでしまった.Google はいかんよ.やっぱ本の方が頼りになるな~.スキップしてしまった区間の旧東海道は,いつかリベンジする.
9:30 頃から歩き出して,15:00 頃,ついに,芦ノ湖を望む.
やった,行けるぞ,関所!
箱根神社の大鳥居のたもとにある,元箱根港からバスに乗り,関所へ.
明日は元箱根港から歩き始めるんで,バスを使用しても問題ないんです.
京側の入り口には,松の代わりに樫やシキミ (木) を使った,箱根の伝統的な門松が.
見慣れてないから,正月ぽくは感じないなぁ.むしろ七夕を髣髴.
この地には元々,復元した関所はあったのだけれど,正確に復元されていないということで,今のはわざわざ作り直したものなのだという.2007 年竣工.
当時の色がきちんと残ってないからといって,人形もわざとグレーでシルエットのようにしているのが,律儀.
建物は,大雑把にいうと,手形を検める場所のほか,厩,エライ人の生活の場,エラくない人の生活の場,牢屋,見張り塔.
案内の人がいろいろ説明してくれて,資料館もあるので,大変見応えがある.
「旧東海道を歩いてきたんですけど,道がやたら狭いところがありましたね.大名行列もあそこを通ったんですか」
「そうです,そうです.江戸を攻めづらいように,わざとそうしているんですよ.昔は竹を敷いてたのですが,予算がかかるので石畳になったみたいですね」
江戸を守るために作られた関所は,全部で 53 ヶ所あり,関所ごとに「往復する女をチェックする」「鉄砲はチェックしない」など,内容が異なるそうだ.これは関所内の高札に書いてある.
箱根の関所は,昔,社会科で習った「入り鉄砲,出女」を検分しており,手形は江戸から出ていく女性のみが必要.
出女は女性役人が調べる.髪の毛を解かせている人形があったので理由を聞くと,大名の奥方と下々の者は,ヘアカットの形が違うため,それを調べているのだという.江戸の重要な情報をスパイとして持ち帰ろうとした奥方が,町女に取らせた手形で関所を通ろうとしても,難しい,ということのようだ.
また,ほくろの位置などもパスポート (手形) に書いてあるので,それを確認するのだとか.
「昔は写真がなかったですからね~.そんなので確認していたのですよ」
意外だったのは,250 年続いた関所の歴史の中で,関所破りで死刑になったのは,たった 5 人だそうな.
「存在自体に意義のある,権威のある関所なのです」
案内の女性は胸を張った.
箱根関所: ★★★★☆ (何度も来るような場所ではないと思うけど,来たことのない方は是非).
バスでホテルに向かったのだけど,ホテル箱根エレガンスはエライ渋い.
道は雑草に覆われていて,スリッパは全部破れている.ベランダに出るガラスは割れている.
疲れていたので部屋でしばらく休み,夕食に.
薄暗い部屋はろうそくで照らされ,ムーディーで,古びた建物も余り気にならない.
二面の窓からは芦ノ湖が見えるし,カトラリーもいいものを使っている.創業当時の興隆を感じる.今は予算がないのかなぁ.
食事は梨とグレープフルーツの食前酒に始まり,どれも大変おいしかった.
地元の野菜のバーニャカウダ.
ミネストローネ.
アコウダイのムニエル.
和牛ステーキ.
シフォンケーキ.
満足.
隣の客と若いウェイター (フロントと兼任) が話しているのを聞いていると,明日,駅伝の選手も二名泊まりに来るのだという.
「初めてなんですけどね」
と,彼ははにかみながら言った.
ちなみに彼は,長袖シャツ・ズボン・腰エプロンとも黒で,ギャルソン風だったのだけれど,途中で Tシャツと短パンの中年親父が「あーごめんね,遅くなっちゃって~.皿下げるけどいい~?」と来たのが面白かった.
これが親子で,オーナーは爺さんとか?
風呂は露天 1 つ,内風呂 2 つが,全て貸切 (ユニットの部屋風呂はある). シャンプーなどは貸し出し.部屋のアメニティは歯ブラシだけだし,もしかしたら,これが箱根のデフォルトなのだろうか.
今日は上り坂ばかりだったので疲れたな.箱根湯本の高度は 100 m 程度,元箱根は 730 m 位.大分上ったのだ.
明日筋肉痛になっていないといいけれど.
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