20240427 山の神は扇の松で手招きする
【東海道:石部宿】
朝食は、チェーンのホテルのビュッフェとしては平均的なラインナップ。
AB ホテル湖南:★★★☆☆(普通のビジネスホテルであるがコンパクトな大浴場あり)
休暇は本日で終了なので、いずれにしても本日中に東京に帰らねばならない。
一方、次回はどうやっても京都に着くと思うので、今回は無理をして歩く必要はない。
ならば、少々寄り道をしてみよう。
昨日、歩いている時に「平松のウツクシマツ自生地」という、国指定天然記念物があることを知ったので、気になっていたのだ。
美し松は、広重の浮世絵にも描かれた松で、地面からすぐに放射線状に枝分かれする枝ぶりを特徴とする。
アカマツで、ある潜性(劣性)遺伝子が揃うと発現するが、顕性(優性)遺伝である、一般的な長い一本の主幹をもつ形状の松が混じると、自然に消滅してしまう。
そのため、ウツクシマツの群生地は日本ではここのみなのだ。
ウツクシマツの形状は四種に分類され、等と説明文を読みながら、散策をしていると、近くに神社があるという。
多度(たど)神社。(急斜・眺望よし)
Googleマップで調べると、徒歩1分。
まぁ、今日はのんびり旅の予定だし、1分なら足を伸ばすか。
……これまでの人生で、Googleマップには、何度も騙されてきたのに、なぜ人類は学ばないのであろうか。
看板の示すままに進むと、山道というよりも、道なき道に案内され、にっちもさっちも行かなくなる。
かといって、今更引き返すのも悔しいので、進んでしまう。
なぜ人類は……。
看板通りの急斜面を、息を切らせながら登る。
「あッ、ゴメン」
蜘蛛の営みをなるべく邪魔せぬように歩くのだが、落ち葉の滑る足元に気を取られていると、細い糸を途絶えさせてしまう。
だけど蜘蛛は気分を害した様子も見せずに、黙々と作業を続けている。
滅多に訪れないヒトだろうが、風に飛ばされた枝だろうが、自分の達成したものを崩されることに、彼女は拘泥していないように見える。
地には桜の花弁や栗のイガが散り、鳥や虫の音がそこかしこを埋める。
皮膚で外界と区切られた僕の肉体もまた、彼らと同様、脈々と続く何らかの集合体を構成しているように感じる。
15分ほど歩くと、眺望が開ける。
美松山の頂上である。
神社、というには少々控えめに、ごく小さなお社が一つ、村を見下ろしている。
鳥居も賽銭箱もないが、手水鉢があるせいだろうか。
路傍のお社とは一線を画した、神聖さをまとった空気がただよっている。
下山後、麓の松尾神社と、併設された神宮寺である、南照寺(なんしょうじ)を参拝。
南照寺は延暦24年(805)に開基、松尾神社は仁寿三年(853)に勧請されたそうだ。
この地域では、ウツクシマツを神木として崇めているそうだけれど、仏教や神道といった区分よりも、プリミティブな信仰があるのかもしれない。
南照寺の本殿外壁の長押の上に、なぜか「平松城址の研究」なる板が掲げてあるのが印象的である。
ご住職か檀家さんの研究なのだろうか。
さて、今回の東海道旅はこれにて終了。
甲西駅まで出て、電車を乗り継ぎ、難波へ。
友人と会う約束があるのだ。
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