20200314 湯煙と瀑布と鳥居と
朝はバイキング.キビナゴや豚しゃぶ,鶏飯が鹿児島らしい.
珍しいところでは灰汁巻き (あくまき).孟宗竹で巻いた餅米を灰汁で炊いたものだそうだ.竹皮で押さえ込まれていることで,膨張する餅米がつぶれ,餅になるというのが面白い.
きな粉をかけて食ったが,苦味と酸味に竹の発酵したような独特の臭みが混じり,不思議な味である.
飯の後,部屋でしばらく休んだのち,外へ出た.
宿から歩いて 5 分程度の霧島温泉市場という,観光協会に土産屋と飲食店が加わった一帯へ行く.
入り口のところに湯気の出ている小屋があり,サツマイモやとうもろこしなどを蒸している.
丸尾滝へ行った.市場から坂道を歩いて 5 分程度.
滝には温泉成分が混じっていて,滝壺が青白く,湯気が立っている.激しい音を立てて流れる勇壮な滝は,表面を流れる直瀑と,背面の柱状節理に沿う斜めの渓流瀑が重なり,見飽きない.
そのあと少しだけ山道を歩いた.
市場へ戻り,霧島そばを食べた.「霧島そば」と言ってもこれといったものがあるわけではない様だが,この店の霧島そばは山菜と三つ葉,菜の花とさつま揚げが載っている.菜の花のほろ苦さが,甘じょっぱい汁と合う.
1080 円.
朝食に白米と鶏飯と両方食べたのに蕎麦も加えると大分腹はいっぱいであったが,温泉で蒸してあるとうもろこしも食うことにした.明らかに食い過ぎである.
小屋に近づくと,むせる様に硫黄の匂いがする.
足湯に浸かりながらとうもろこしに齧り付いた.瑞々しく甘い汁が口の中に広がる.
一旦宿へ帰ると車に乗り,霧島神宮へ向かった.
駐車場には「日本発祥の地」と書かれている.天孫降臨神話で,天照大神が葦原の中つ国を治めるために孫の邇邇芸命 (ににぎのみこと)を地上に遣わしたのがこのエリア (高千穂峰) だからという.
鳥居を潜ると急に杉の鮮やかな香りがする.針葉樹を抜けてきた風に囲まれると自分の中に巣食っている陰鬱とした気が和らいでいく様に感じる.
神宮の下の売店で霧島山麓牛乳とクリームサンドケーキを買った.ケーキはごく柔らかく,舌の上で溶ろけるようだった.成分無調整の牛乳は味が濃く,クリームの香りがするが,乳脂肪分は 3.5% 以上.特別高いわけではない.乳の旨味なのだろうか.そして裏を見て気付いてしまったが,宮崎県都城市製造と書いてある.霧島と銘打っているので鹿児島県霧島市産だと思っていたが,霧島山は鹿児島と宮崎の県境なので,宮崎産でも文句を言う筋合いではない.
売店を後にして,ロータリーの駐車場に戻る.ついでに駐車所の向こうにある大鳥居も眺めに行く.途中の山道で葉桜を見つけた.向こうに大鳥居の朱.
そういえば霧島に来てから,道端に炭酸カルシウムの袋が置いてあるのが目についた.ここらで雪も降るまいし,火山灰の埃除けだろうかと思っていたら,凍結防止と書いてあった.鹿児島は南国と言うにはちと涼しいようだ.
車に乗って高千穂河原ビジターセンターへ向かった.閉館間際の施設に飛び込み,中を一周する.高千穂峰からのパノラマが中々雰囲気を醸している.
裏手にある霧島神宮の古宮址 (こぐうし) に寄る.1234 年 (覚えやすい年!) に霧島山の御鉢の噴火により焼失した神宮の跡地である.この後神宮は今の場所に移ったのだという.御鉢を背にして広がるがらんとした広場には,一本の木が立ち,神聖な空気が漂っている.
駐車場の近くで,非難壕に気づく.活火山と生きるということは,こういうことなのだろう.
宿に帰り,露天風呂に入る.笹が春の息吹になびき,さらさらと衣擦れのようだ.注ぎ込む湯の音がそれを消し去ろうと響く.上気した頬に吹く風は温かい.もう冬も終わりだな….
しんみりとして風呂上がりにスマホを眺めたら,東京で雪が降ったという.おや,まだお前,そこにいたのか.
良い時間になったので,食堂に行く.
前菜は盛りも昨日と異なり,自家製のカラスミやローストビーフ寿司が載っている.カラスミは潮の香りと塩分のバランスが良く,美味い.添えてある大根の薄切りと合わせると更に旨味が引き立つ.エソという魚の卵を蒸したものは僕は初めて食べたのだけれど,たらこのような小さい粒をぷちぷちと噛み締めるほどに濃厚な旨味が染み出してくる.
お造りは昨日はなかった焼きサバや鰹,イカなどあり,同じものを食わせまいとする心意気を感じる.
前日と全く違うメニューに,腹一杯だと思っていた胃が拡張するのを感じる.食べいでか!
その後も冬瓜の餡かけ,鶏天など,人間の食欲について誤解をしているのではないかという量の食事が出てくる.
メインはすき焼き.
最後にご飯と一緒に茄子の味噌汁が出てきたのだけれど,後になって「申し訳ございません,昨日と同じ味噌汁をお出ししてしまいまして….今から豚汁をお持ちしましょうか?」と言われたので,丁重にお断りした.
飲み物はまず,さつま国分をロックで.酒造が地元向けに卸していると言うが,東京で飲んだこともある.芋の香りが強く甘い.
次いで伊佐大泉.香ばしい香りがする芋焼酎だ.
この宿は全般的に飯がいい.風呂も悪くない.部屋も清潔で眺めが良い.僕は宿を,この「飯・風呂・部屋」で評価するのだけど,霧島観光ホテルはもう一度来てもいい,友人に勧めてもいいと思った.
結局のところ,それは自分との対話だ.味覚, 嗅覚,触覚,聴覚,視覚….僕は普段,自分を喜ばせているだろうか?喜ばせようとしている自分に対して,喜んでいる自分はいるだろうか?
己が強いと旅の鮮やかな喜びが色褪せてくる.僕が旅を愛するのは,執着する己から距離を置くことができるからではないかと思う.良いバランスを….
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珍しいところでは灰汁巻き (あくまき).孟宗竹で巻いた餅米を灰汁で炊いたものだそうだ.竹皮で押さえ込まれていることで,膨張する餅米がつぶれ,餅になるというのが面白い.
きな粉をかけて食ったが,苦味と酸味に竹の発酵したような独特の臭みが混じり,不思議な味である.
飯の後,部屋でしばらく休んだのち,外へ出た.
宿から歩いて 5 分程度の霧島温泉市場という,観光協会に土産屋と飲食店が加わった一帯へ行く.
入り口のところに湯気の出ている小屋があり,サツマイモやとうもろこしなどを蒸している.
丸尾滝へ行った.市場から坂道を歩いて 5 分程度.
滝には温泉成分が混じっていて,滝壺が青白く,湯気が立っている.激しい音を立てて流れる勇壮な滝は,表面を流れる直瀑と,背面の柱状節理に沿う斜めの渓流瀑が重なり,見飽きない.
そのあと少しだけ山道を歩いた.
市場へ戻り,霧島そばを食べた.「霧島そば」と言ってもこれといったものがあるわけではない様だが,この店の霧島そばは山菜と三つ葉,菜の花とさつま揚げが載っている.菜の花のほろ苦さが,甘じょっぱい汁と合う.
1080 円.
朝食に白米と鶏飯と両方食べたのに蕎麦も加えると大分腹はいっぱいであったが,温泉で蒸してあるとうもろこしも食うことにした.明らかに食い過ぎである.
小屋に近づくと,むせる様に硫黄の匂いがする.
足湯に浸かりながらとうもろこしに齧り付いた.瑞々しく甘い汁が口の中に広がる.
一旦宿へ帰ると車に乗り,霧島神宮へ向かった.
駐車場には「日本発祥の地」と書かれている.天孫降臨神話で,天照大神が葦原の中つ国を治めるために孫の邇邇芸命 (ににぎのみこと)を地上に遣わしたのがこのエリア (高千穂峰) だからという.
鳥居を潜ると急に杉の鮮やかな香りがする.針葉樹を抜けてきた風に囲まれると自分の中に巣食っている陰鬱とした気が和らいでいく様に感じる.
神宮の下の売店で霧島山麓牛乳とクリームサンドケーキを買った.ケーキはごく柔らかく,舌の上で溶ろけるようだった.成分無調整の牛乳は味が濃く,クリームの香りがするが,乳脂肪分は 3.5% 以上.特別高いわけではない.乳の旨味なのだろうか.そして裏を見て気付いてしまったが,宮崎県都城市製造と書いてある.霧島と銘打っているので鹿児島県霧島市産だと思っていたが,霧島山は鹿児島と宮崎の県境なので,宮崎産でも文句を言う筋合いではない.
売店を後にして,ロータリーの駐車場に戻る.ついでに駐車所の向こうにある大鳥居も眺めに行く.途中の山道で葉桜を見つけた.向こうに大鳥居の朱.
そういえば霧島に来てから,道端に炭酸カルシウムの袋が置いてあるのが目についた.ここらで雪も降るまいし,火山灰の埃除けだろうかと思っていたら,凍結防止と書いてあった.鹿児島は南国と言うにはちと涼しいようだ.
車に乗って高千穂河原ビジターセンターへ向かった.閉館間際の施設に飛び込み,中を一周する.高千穂峰からのパノラマが中々雰囲気を醸している.
裏手にある霧島神宮の古宮址 (こぐうし) に寄る.1234 年 (覚えやすい年!) に霧島山の御鉢の噴火により焼失した神宮の跡地である.この後神宮は今の場所に移ったのだという.御鉢を背にして広がるがらんとした広場には,一本の木が立ち,神聖な空気が漂っている.
駐車場の近くで,非難壕に気づく.活火山と生きるということは,こういうことなのだろう.
宿に帰り,露天風呂に入る.笹が春の息吹になびき,さらさらと衣擦れのようだ.注ぎ込む湯の音がそれを消し去ろうと響く.上気した頬に吹く風は温かい.もう冬も終わりだな….
しんみりとして風呂上がりにスマホを眺めたら,東京で雪が降ったという.おや,まだお前,そこにいたのか.
良い時間になったので,食堂に行く.
前菜は盛りも昨日と異なり,自家製のカラスミやローストビーフ寿司が載っている.カラスミは潮の香りと塩分のバランスが良く,美味い.添えてある大根の薄切りと合わせると更に旨味が引き立つ.エソという魚の卵を蒸したものは僕は初めて食べたのだけれど,たらこのような小さい粒をぷちぷちと噛み締めるほどに濃厚な旨味が染み出してくる.
お造りは昨日はなかった焼きサバや鰹,イカなどあり,同じものを食わせまいとする心意気を感じる.
前日と全く違うメニューに,腹一杯だと思っていた胃が拡張するのを感じる.食べいでか!
その後も冬瓜の餡かけ,鶏天など,人間の食欲について誤解をしているのではないかという量の食事が出てくる.
メインはすき焼き.
最後にご飯と一緒に茄子の味噌汁が出てきたのだけれど,後になって「申し訳ございません,昨日と同じ味噌汁をお出ししてしまいまして….今から豚汁をお持ちしましょうか?」と言われたので,丁重にお断りした.
飲み物はまず,さつま国分をロックで.酒造が地元向けに卸していると言うが,東京で飲んだこともある.芋の香りが強く甘い.
次いで伊佐大泉.香ばしい香りがする芋焼酎だ.
この宿は全般的に飯がいい.風呂も悪くない.部屋も清潔で眺めが良い.僕は宿を,この「飯・風呂・部屋」で評価するのだけど,霧島観光ホテルはもう一度来てもいい,友人に勧めてもいいと思った.
結局のところ,それは自分との対話だ.味覚, 嗅覚,触覚,聴覚,視覚….僕は普段,自分を喜ばせているだろうか?喜ばせようとしている自分に対して,喜んでいる自分はいるだろうか?
己が強いと旅の鮮やかな喜びが色褪せてくる.僕が旅を愛するのは,執着する己から距離を置くことができるからではないかと思う.良いバランスを….
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