20200321 相棒を待つ間も旅には出られる

僕と愛車の付き合いは,もう 15 年を超える.漫才で言うなら,ボケを言う前にツッコミが入り,誰も客が笑わない落ち目のコンビみたいなものだ.

だから,今回路上でがたがたと振動がして立ち往生した時も,さして驚きはしなかった.
ディーラーに電話をすると,イグニッションコイルかスパークプラグの問題によって,四気筒のうち一つが正常に働いていないので,回転と共に音がなり,力が出ないではないかと言う.

「走っていると直ることもありますよ」「でも高速は走らない方がいいです」などという無責任な言葉を信じ,しばらく走ってみたが,突然エンジンが切れた.これは高速道路でなくても危ないだろう.
結局保険のロードサービスを呼んでレッカーして貰った.60 km までは無料というこのサービスを,僕は車の不調で既に何回か使っている.搬送される相方の後ろ姿を見つめ,今度も元気で帰って来いよ,と祈る.前回の車検で,そろそろ部品がなくなりますと宣告を受けているのだ.

レッカーを待っている間に持参の餡パンを食い,レンタカーの予約をしておいた.電車で行こうかとも思ったのだが,車で 70 分のところが 150 分かかるのだ.昨今の社会情勢の中,長時間電車に乗るのは望ましくない.そもそも今回の旅のコンセプトは,他人と交わらない,なのだ.

トヨタレンタカーで借りたヴィッツは,アクセルが軽く,なんだか不安になるが,首都高に乗る頃にはだいぶ慣れてきた.僕は上手い方ではないが運転は好きなので,慣れていない車に乗るのも楽しい.普段使わない脳を使っている気がする.

ところが僕の脳は運転するのが関の山であったようで,寄ろうと思っていた海ほたるを通り過ぎてしまった.あの船のような施設で,何か食いながら海を眺めようと思っていたのに.

仕方がないので木更津でアクアラインを降りたあたりで,宿に行くまで少し時間潰しをすることにした.
目に入ったのが「道の駅君津 うまくたの里」だ.「うまくた」は「馬来田」で,万葉集のころからある地名らしい.
https://www.kisarepo.jp/2017/02/28/%E6%9C%A8%E6%9B%B4%E6%B4%A5%E5%B8%82%E5%86%85%E5%88%9D%E3%81%AE%E3%80%8C%E9%81%93%E3%81%AE%E9%A7%85%E3%80%8D%E5%90%8D%E7%A7%B0%E6%B1%BA%E5%AE%9A%EF%BC%81%E3%80%80%E3%80%8C%E9%81%93%E3%81%AE%E9%A7%85/

その道の駅はインターから降りてすぐのところにある.入口にある巨大なピーナッツが出迎えてくれた.ピーナッツ…いや落花生は,全国の収穫量の 79.2% (2017 年) を千葉が占めるというのだから,名実ともに千葉を代表する農作物である.

http://chiba-kisarazu.com/


カフェはまだ 15:30 だというのに入ることが出来なかったので,ピーナッツソフトを食って千葉気分を味わうことにした.ねっとりとした濃厚なソフトクリームは,想像以上にピーナッツ…いや,落花生の香りがする.


ぶらぶらと広い建物の中を歩いた.農家の方々の写真など飾られていて,力の入れ具合を感じる.千葉は農業産出額が全国 4 位 (2017 年) の農業県なのだ.


しかし一部の作物は他県産で,こういった施設を運営するのも大変だろうなぁと,妙な気を使ってしまった.


外の花卉コーナーで,珍しい花を見つけた.カンガルーポウ Anigozanthos といって,オーストラリアの花のようだ.短い毛が密集していて,動物のようだ.カンガルーの手をしげしげと眺めたことはないが,こう言われると,こうなのかも知れない.


大分堪能したので,宿に向かうことにした.
道は見晴らしのいい農地と,平屋の並ぶ田舎町を交互に繰り返す.
そこに山が加わってきたところで,宿に着いた.亀山温泉ホテルは昭和の香りが漂っていた.


ホテルの入り口を入ると,昭和の香りが漂う味わい深いラウンジ.


エレベーターホールの甲冑.


部屋の向こうには,ダム湖「亀山湖」が見える.今回の旅の目的である,ぼんやりする,にはもってこいだ.



道の駅で買った「チバリバリ」を食う.
基本的に塩っぱいポテトスナックなのだが,口の中にピーナッツの香りが広がり,何とも言えない.甘さはあまりない.


温泉は露天風呂こそないものの,堆積した植物が微生物によって分解されたために茶色になったという湯が満たされた大浴場は,湖も眺めることが出来て悪くない.

風呂上がりに食堂へ.ラウンジの一角を仕切ったような場所にある.

飯は思いのほか良かった.アカモク (ギバサ: 粘りのある海藻) の酢のものに始まり,桜の香りがする胡麻豆腐や,春キャベツとカリフラワーのポタージュなど,季節感がある.向付に添えられたズイキは,里芋ではなくて蓮芋だという.仲居さんは「大根と間違えるほど太くなることもあるんですよ」と教えてくれた.
メヌケの煮つけは,赤魚だという.メヌケと呼ばれるものには赤魚以外もあるらしい.


ときめき鶏 (千葉市のハーブ鶏) 醤油麹蒸し.


山菜の天ぷら,桜エビの炊き込みご飯.
旅館の飯というのは,なぜこうも量が多いのか.
これでもか,と蟹の味噌汁まで出てきた.

吉寿,福祝,峯の精と,君津の酒を飲むうち夜は更けていった.


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