20200209 日本で一番寒い町

折角サハの為に買った装備を一度しか着ずにお蔵入りするのは勿体無いと思い,日本で一番寒い町,陸別へ行くことにした.本日の陸別の最低気温は - 30.7 度.日本も結構寒い.

残念ながら本日一番寒いのは陸別ではなく,江丹別というところで,-36.0 度.サハに迫る寒さである.観測史上一番寒いのは -41.0 度の旭川.

だが,平均を取れば一番寒いのは陸別である.陸別町のキャッチフレーズ「日本一寒い町」には裏付けがあって,日本気象学会の学術誌「天気」に,検証した論文を載せている.

装備は上半身がヒートテックの上に長毛の山用防寒着 (通称「クマ」), マグロ倉庫用ジャケット.下半身はタイツの上に山用防寒パンツ,靴はソレル社カリブー.サハより 2 レイヤー位少ない.
マカロニ構造のマフラーも忘れてしまった.

フライトは Air Do だが ANA の機械でチェックイン出来る.搭乗手続きとセキュリティチェックを手短に済ませ,搭乗口近くの軽食屋で肉玉うどんを食った.化学調味料の味が分からなくなる程大量の七味をかける.僕は辛いものが好きなのだ.麺の七味も,ピザのタバスコも,これでもかというくらいかける.


B767-300 で女満別へ.ここからバスで北見へ行き,北見からさらにバスで陸別へ行く.

空港の外を見ると,バス停の屋根につららが下がっている.雪が溶けるということは,そこまで寒くはないのか.現在 - 10.0 度で最高気温なのだけれど.溶けているのは室温によるものか.



女満別空港の外には北見行きのバスがもう停まっていた.13:41 の出発までに昼飯を調達しようと思ったが,土産物屋とコンビニ,スープカレー屋「奥芝商店」くらいしかない.仕方ないので奥芝商店でカレーパンを,売店で,いか飯とビールとチーズを買い込みバスに乗ろうとしたら,もう出てしまっている.
あと 10 分くらいあったのに,と案内所に聞くと,飛行機の到着に合わせて出発するのだという.そういえば出発時間は Google には書いてあったが,空港には書いていない.



次に来たバスは 13:50 頃に女満別空港を発った.乗客は僕を含めて 5 名.空港には複数のツアーの客がいたのに,存外寂しい.

窓の外は,農地だろうか.足跡もなく広がった雪原に疎に家が建っている.


雪は好きだ.下に醜い思いが籠もっていても,全てを覆い隠し,美しいかの如く振る舞えるから.

カレーパンとチーズを食って,ビールを飲んでいるうちに腹が満ちてきた.いか飯は 4 月までもつようなので,今食わなくてもいいだろう.
チーズは「北海道産生乳 100% 使用」と書かれていたので,過剰な期待をしてしまったが,普通のプロセスチーズ.網走ゴールデンエールはホップの香りが鮮やかで,コクもある.



北見バスターミナルでは 30 分ほどあったので,売店に寄ってみた.ビールの他に「北海道!」と銘打ったつまみが大量に売っている.
北海道と書けば売れると思いやがって,と文句を言いながら,鱈とほっき貝と甘海老を買った.ビールは北海道のものを数種類.

Google によれば,北見駅から陸別までは 57 のバス停があるそうだ.
明日の陸別・帯広間 128, 帯広・然別間 84 に比べれば可愛いものである.そもそも人がいないので,どうせバスは停まらないけれど.

窓の外の光景は,空港からの路と変わらない雪原.光が目を刺し,頬に熱を伝える.


本日の宿「オーロラハウス」にチェックイン.道の駅の二階.前に並ぶ牛のベンチがイカす.
「宿泊研修施設」と頭についているだけあって,合宿所のようだ.部屋には歯ブラシくらいしかなくて,ヘアブラシもない.


この建物は今は廃線になったふるさと銀河線の駅でもある.裏手には線路と車輌があって,駅のような待合所もある.4 - 10 月には運転体験もできるそうだ.


売店は 17:00 まで.地域の子供達が描いたと思しき絵のラッピングのチョコレートが売られている.子供の名前まででかでかと書かれていたので,コンプライアンスの時代,写真は控えておく.
陸別の牛乳や鹿を使った食い物や洗練されたデザインのグッズなど,小さな田舎町の土産物とは思えないほど,中身も包装もいちいちセンスがいい.町役場に気の利いた人がいるのだろうか.
関寛斎なる地元の名士 (陸別開拓の父) が千葉県東金市だから,という理由でさして大きくない店の中に千葉県コーナーが設けられていたのが面白い.

先ほどのビールを一杯引っ掛けて休憩.
網走ビールの「流氷 DRAFT」は発泡酒の割にホップの香りが立体的な味を醸している.何よりクチナシで色をつけた緑青が目を引く.
りくべつ低温殺菌牛乳を使ったプリンも食う.かなり濃厚な味.


しばらく周囲を散策するが,これといったものは特にない.連続テレビ小説「なつぞら」で使われたサイロのセットがあったくらいか.

雪はパウダースノーで,握っても固まらない.表面のみ固まった積雪を踏むと,ダックワーズを食べた時のような感触がする.

夕飯は宿で食べた.量の多い家庭料理という感じ.出掛けなくてもいいのは有り難い.


装備にヒートテックの超極暖上下を足してから宿で陸別ハイヤーの電話番号 (0156272515) を聞き,天文台に向かった.車で 10 分ほど.

目玉はカセグレン式の115 cm反射望遠鏡.小型望遠鏡もあるらしいが,今日は見られなかった.

担当の青年が昔の Windows をいじって望遠鏡を動かし,いろいろ見せてくれる.

アンドロメダ銀河,エスキモー星雲,蟹座のイオタ星 (二重星), h+χ (エイチカイ: 二重星団).

巨大な機械が静かに動く様に,気持ちが昂揚する.この望遠鏡の台座は戦艦の砲台を作っているメーカーが作っているのだという.「だから静かで早いんですよ」


うさぎ座の真紅の星,クリムゾン・スターを見せながら「オリオンに優しい心を教えようと神様が兎を送り込んだのに,オリオンが狩ってしまったので,哀れんで星座にしたんです」と解説してくれた.星座になってもなおオリオンの足元にいる兎がいじらしい.

閉館まで星を眺めて,帰りもタクシーを呼んだら,あっという間に来た.「そろそろお戻りだと思ったので」さすがである.

宿の前の温度計は -26 度を示していた.流石にサハ装備だけあって余り寒さは感じない.


宿を眺めながらかつて駅であった頃の姿を思い浮かべる.その時はもっと人がいて,活気があったのだろう.でも,この町は寂れた印象は受けない.一番寒い町ゆえの研究機関.オートレース.寒さを生かした祭り.鹿肉.フェアトレードのチョコ.廃線跡.与えられたものを最大限に生かしているのではないか.
僕などが町づくりに口を出す筋合いはないのだけれど.

いずれにしても陸別,良いところである.
宿がもう少し充実するといいのだけれど,客,そんなに多くないんだろうなぁ….

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