20131030 船は帆をはらみ大西洋へ出港した

【ポルトガル,ポルト】

ホテルで朝食.Nothing in particular.

昼まで残ったアンダンテカードとポルトカードを有効に使うため,カテドラルに向かった.


カテドラルはやや高台にあり,街を見渡せる.

思った以上に大きかったのだが,アズレージョに飾られた外壁が重々しさを和らげる.

誰かトランペットに,カモメの声が彩りを加える.11 時を告げる鐘.


カテドラルの中はミサの最中だった.一瞬迷ったが,折角なので参加することにした.ポルトガル語は少しもわからないが,司祭の声は優しく,高い天井に響く聖歌は記憶の奥で埃かぶった弦を掻き鳴らした.

主に栄光!

完璧主義であった僕は,差し伸べられた手が血塗られたものであるとはね除けた.

だがこうして父の家で,己の正義を貫く力強さに身を委ねていると,安堵感に包まれていく.初めて踏む地で,知らぬ言葉が語られているのに,この佇まいは僕に親しい.その価値観に従って生きたなら,僕は護られていたのに.

僕自身に対する祈りは相応しくないと思われたので,僕以外の者のために祈った.

新しく生まれてくる命が,愛に包まれますように.アーメン.


ミサが終わり,川に沿ってエンリケ航海王子の家に向かった.ポルトカードで無料なので入ってみたが,そうでなければがっかりするかもしれない.


ボルサ宮の入場はツアーのみ.
次のツアーは一時間後,英語ならば二時間以上後.

入場時間はポルトカードの期限をすぎているが,チケット購入が時間内ならば良いようなので 15:30 の回にした.

数時間潰すべく,横にあるサン・フランシスコ教会の裏から木製のインテリアで飾られたクラシックな路面電車に乗った.カード類は使えず.片道 2.5 ユーロ.


市電博物館まで二駅だけ乗ろうと思ったが,何だか惜しくなってきた.しかもほぼ満席の乗客は誰も降りない.この先に何か素敵なものがあるのかもしれない.

電車はガタゴトとドウロ川の横を河口へ向かった.両脇の木々を掻き分けるように進む.正午の太陽は緑を鮮やかに浮かび上がらせる.

川幅が次第に広がり,潮の匂いが鼻を突く.終点である.


電車は 30 分おきに走っているので,乗ってきた車両が戻るのを見送り,半時間ほどあたりをうろつくことにした.ここまで来たのだから,大西洋でも間近で眺めてみるか.



蘇鉄の並木を通り過ぎると,突然空気の流れが変わった.日向ぼっこをする人々も,釣りをする人々も,一様に今という時を味わっている.

灯台へ向かった.

ヒトが樹状に刻んだ防波堤を,波が舐めるように絡みつく様は,神と人が交わる絵のようだ.



規則的に繰り返す波はコンクリートで弾け,時に僕の背よりも大きい波が道を阻む.


僕のような人間は,自然の大きな力を感じることが必要である.
畏怖し,学び,制御した先人の智慧に思いを馳せる.己の中に生じた怒りや悲しみを,一つの自然現象として扱いたいのだ.自然と生きた先人の智慧は,ヒトを扱う学問よりも生々しさが削がれ,僕に滲みとおりやすい.


防波堤で砕けた波は,その大きさを思い知らされるが,砕ける前からそれだけのエネルギーを孕んでいたのだ.砕けなければ町を蝕んでいた.
砕けた波の大きさに怯むことは意味がない.それはもう,過ぎたことなのだ.そして次の波に備えるための智慧がヒトには,僕にはある.

防波堤の上にデッキチェアのテラスを出している店で,大きいツナのサンドイッチとビールを頂いた.ビール二杯込みで 10 ユーロ.




14:15 の便がなく,14:45 の便で町へ戻った.


本来 23 分位の筈が,サン・フランシスコ教会に着いたのは 15:45.案の定ボルサ宮のツアーは断られたが,17:30 の回に振り替えてくれるという.

夕方はポルトワインのセラーに行こうと思ったのだが,こういう時は流れに身を任せるに限る

一時間半あるので荷物を移動させることにした.


川沿いを歩き,ドン・ルイス I 世橋からケーブルカーで町へ.そういえば僕はケーブルカーを日常の足としている所は初めてかもしれない.

本日の宿は Sao Jose,Rua Da Alegria 172.

時間がなかったのでホテルでは殆ど休まずに出掛けた.ボリャオン市場の横を通り,まずはサン・ベント駅へ.思ったよりも早く着いたので,明日の電車の時間を調べた.


ボルサ宮 palacio da Bolsa へは 10 分前に到着.1834 年にマリア二世がポルト商業組合のために建てた建物である.ワインを作り,港から出荷するポルトは経済が発展していたのだ.今でも政治家や経済会の要人のパーティーに使われているという.

どの部屋も大変豪華なのだが,アラブの間は,あっけにとられる程である (内部は写真撮影不可).

意外と内部は小さく,ツアーは 30 分ほどで終わる.ツーリストインフォメーションでもらった冊子によれば,この季節,19 時まで開いているセラーは,A.A.Calem と J.W.Burmester しかない.


ドウロ川を挟んで街の向かい側,ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアと呼ばれる地域にポルトワインのセラーが並ぶ.ドン・ルイス I 世橋の下の段を渡ってすぐ,右に曲がって行く.Burmestes はどこだか見つからなかったので,大きい看板の目立つ Calem に行った.


5 分ほど前に最後のツアーが始まったというので,頼んで混ぜてもらった.試飲とショー付きで 16.5 ユーロ.

ポルトワインはブランデーを加えて一次発酵を止めている.シェリーやマデイラの仲間である.

樽で4-5年寝かせた "Ruby",6年以上寝かせた "Tawny",樽で2年,瓶で10年以上寝かせた "Vintage",白葡萄の "White" などがある.


本日の試飲は Tawny の "Special Reserve" と White の "Old Friend".

Tawny はノートはスピリッツ系の強い匂いがするのだが,舌触りは滑らか.食後にいいかもしれない.White は驚くほど軽やか.レモンを効かせたムースと合わせてみたくなった.



一旦宿に帰り,少し休憩してから,トリンダーデ教会の裏手,アントゥヌスへ.Vitela Assada,子牛のローストとサラダ.ワインはドウロの赤ワイン,Duas Quintas.付け合わせのローストポテトも,ケールの入ったポテトサラダも美味しい.

虫が多くて,最後ワインの中にまで侵入してこなければ,いい店なのだが.

本日の歩数,23923 歩.毎日よく歩くものだ.

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