20220610 山の中で静養する
【ドバイ~チューリッヒ~サメーダン@スイス】
数時間寝たところで機内が明るくなり、目が覚めた。
朝食はオムレツとソーセージ。冷凍かなぁ。まぁ普通。エミレーツ航空のネットは結局、一回も使えなかった。
ドバイ空港は午前 4:00 でも多くの店が開いていた。
成田でのチェックインの時「成田ではエコノミーだとラウンジを使えない」と言われたので、ドバイなら大丈夫なのかと、エミレーツのビジネスラウンジに来てみた。
「申し訳ありません。今回、マイレージが JAL に入っているので、エコノミークラスのお客様はラウンジをご使用いただけません」
えーー。マイルをどこの航空会社に加算するかで、ラウンジが使えるかどうかが決まるのか!エコノミーでもビジネスラウンジが使えるって、そういう制限があるとはーー!どこにも書いてないじゃん。
仕方ないので、近くのベンチで時間を潰していたが、折角なのでプライオリティ・パス(各国の空港でラウンジが使えるサービス。僕は楽天カードの附帯サービスとして利用している)を使ってみることにした。
C23 ゲート近くの Marhaba ラウンジは改装中だったので、B19 ゲート近くの Marhaba ラウンジへ。C23 が改装中のせいか、混んでいる。
食べ物はスクランブルエッグとベイクド・ビーンズ、フライドポテト程度で、余り食指が動かない。
酒はバーのようなところで頼む。
値段票が並んでいるので、有料なのかな、と思い、ビールがいくらか聞いたら、タダだった。値段票があるもののみ有料のようだ。
チューリッヒまでのフライトは二階建ての A380。ファーストクラスにシャワーがついてるやつ。乗らなくてもいいから、いつか覗いてみたい。
客は半分程度。
離陸後一時間半くらいでアップルパイが配られた。朝食代わりかなぁ?
えーと、いまドバイが 10:00、日本が 15:00 くらいで……。
僕は長距離移動をするときは、時差ぼけを最小限にするべく食事や睡眠を塩梅する。睡眠時間の量などで調整はするが、基本的には乗った瞬間に、行き先の時刻に合わせる。で、えーと、スイスは 8:00 かな。まぁ、軽い朝食ということでいいだろう。
アップルパイを食べた後は、少し仮眠をとった。朝寝坊したぐらいに体をしているつもり。
着陸二時間前ほどにランチが出た。柔らかいけれど味のない肉にドミグラス系のソースをかけたビーフはおいしくはなかったが、デザートのチーズクリームは、控えめな甘さにドライフルーツやナッツがアクセントを添えた中東風で良かった。あれ、エアーチーズケーキっていうやつかなぁ?
同じくネットは準備されているのだけれど、使えず。ビジネスクラスの席と思われる Wifi が大量に検出されたので、ビジネスクラスでは使えるのかもしれない。
チューリッヒ空港では Gate E に着き、スカイメトロで出口に向かう。
入国は大して混んでおらず、極めてスムーズ。ちなみに現在、入国には PCR テストの結果や、ワクチン接種証明などは必要なく、新型コロナウイルス流行前と同じ状況である。
飛行機の中では、エミレーツの規定により、マスクをつけることとなっていたが、空港に着いた瞬間にほとんどの乗客はマスクを外す。
街中に出ると、マスクをつけているのは 1-2% というところか。こないだのパリと同じくらいの印象。
さて、本日より二泊三日で南東部のエンガディン地方に行くことにした。山岳州であるグラウビュンデン州の中にある、谷沿いのエリア、エンガディンは、独特の壁画(スグラフィティ)のある建物があったり、ロマンシュ語と呼ばれる言語が話されていたり、地方色のある地域で僕は結構好きだ。日本でいうなら、みちのくという感じかなぁ(スイスに詳しい人、適当なこと言ってスミマセン)。
ちなみにロマンシュ語はドイツ語、フランス語、イタリア語と並ぶ、スイスの第四の公用語(四番目に話者が多いというわけではない。政治的圧力を感じるが、追求しない)。
とりあえず空港から Samedan サメーデンまで片道 78 スイスフランのチケットを購入。
サマーデンはウィンタースポーツのメッカ、高級リゾート地のサンモリッツの隣町だけれど、サンモリッツほどホテルが高価でなく、町もきれいと聞いたので、今回の滞在地に選んだ。
空港から鉄道でチューリッヒ中央駅に行く。トラムでも行けるが、鉄道が圧倒的に早い。中央駅で乗り換えて IC3 線でまずは Chur クールへ向かった。写真は中央駅。
クールにはカタカナで「クール」と標識が。よく見ると、箱根登山鉄道と書いてある。
1979 年にスイス南東部、グラウビュンデン州を中心に走るレーティッシュ鉄道と箱根登山鉄道が姉妹提携しているからである。
日本の山岳鉄道が 1907 年にスイスの登山鉄道を参考に箱根登山鉄道で始まったご縁。100 年以上前にスイスの鉄道技術が日本でも導入されたことに、しみじみする。
日本の国旗の描かれた列車もあった。
クールからレーティッシュ鉄道に乗り換える。この鉄道は、一部がユネスコの世界遺産に指定されていることで知られる。
この線のうち、トゥージス Thusis からティラーノ Tirano(国境超えてすぐのイタリアの町)までが世界遺産。100 年ほどの歴史ある鉄道技術と景観で 2008 年に登録された。
ちなみにトゥージスからサンモリッツまでがアルブラ線、サンモリッツからティラーノがベルニーナ線。
おんなじ名前でいいじゃん、と思うんだけど、どうも、使用している鉄道技術だとか、歴史的変遷だとか、色々あるらしい。。
まぁ、常磐線が千代田線になって小田急線になって、とか語りだすと、止まらない諸氏もおるので、そういうことなのだ。世界中のテツに配慮。
もうちょっと知りたい向きは、スイス観光協会のウェブサイトへどうぞ。
https://www.myswitzerland.com/ja/experiences/rhaetian-railway-albulabernina/
いわゆる氷河鉄道と、世界遺産の範囲は一部が重複している。
氷河鉄道じゃなくても氷河は見えるんだけど、そこはそれ、時の有力者が……。
いや、まぁ、どうでもいいや。
この電車には、展望車やファミリー車もある。
展望車は座席がなくて、窓に向かって寄っかかる席がある。横向きに乗れるのがポイントのようだ。
ファミリー車の滑り台。この車両の横に、車内販売車がいるが、行きでは出払っていて、見られなかった。
一等車は横三列。
二等車は四列。僕は二等車でそんなに不満はなかった。
「指定席はあるの?」スイスの知り合いにチャットで聞く。
「各クラスで、指定席とすることができる。指定が入ると、席の横のタグが赤くなるので、自由席券の場合は、そこに座らないでね。ちなみに、指定席にすると、自由席券の客から恨まれる」
「はぁ」
席の間のテーブルに路線図と見どころの絵が書いてある。路線の右下のバックがグレーとなっている(太く見える)部分が世界遺産。
橋の上を走る姿を見たことのある方もいるかもしれない。ただね、当たり前なんだけど、あの写真、電車の外から出ないと撮れないんだよね。中からだと、橋のみ。
基本的にアルブラ線は進行方向に向かって右側が谷が多く、左側が山が多いので、右側の方が眺めがいい。
さて、サメーダンに着いたので、Hotel Palazzo Mysanus に向かう。天井が低く、調度の金具に歴史を感じる、400 年前の建物を利用したホテルだ。
荷物をホテルに置いて、町を歩く。13 世紀の城(というか有力者の邸宅)などがある。
そもそも、世界遺産の鉄道のあたりは、ローマ時代に交易で栄えたあたりで、歴史があるのだ。
街の中心にあるプロテスタントの教会。スイスは村ごとにプロテスタントやカトリックに分かれていることが多い。プロテスタントの村でも、カトリックの教会はあるが、中央部の教会で判断できる。
ちなみに、チューリッヒ市は両方の教会がたくさんあるが、街自体はプロテスタント。
壁画(スグラフィティ)のある建物を眺めていると、中世の街に迷い込んだような気分になる。
その間から見える山々。
スイスの田舎の魅力は緊張感を強いられないことではないかと思う。どこに行っても山と空が見えて、のんびりしている。町を歩いていると、自分の中に積もった毒っ気が抜けていく気がする。
日本の田舎でも、毒は抜けるけど、他の国だと、非日常感がそれを加速する。
ヘリコプターが時々飛んでいるのは、町にプライベート用の飛行場があり、サンモリッツに行く人々が使用しているのだと後で知った。
サメーデンの村で、雰囲気のいい大きな家々のうち、新しいものは別荘が多い。資本主義の匂いを感じる。
ちっ、金持ちめが!
と思うが、金持ちこそリラックスが必要なのかもしれないな、と今日の僕は寛大な気分である。君たちも日頃の疲れを癒やしたまえ。
町の外れにあるのは様式からいってカトリックの教会だろうか。
次第に暮れゆく街を歩いていると、自分の中で肥大していた我が、薄くなるような気がしてくる。
東京や途上国で着ていた鎧がほぐれていく。
驕らず、構えず、ただあるがままに。
関係ないけど、洗濯物干し。日本では見たことないなぁ。
夕食は「Central」で。
店内はスイスの田舎風の家具が並ぶ。
まずは、エンガディン風麦のスープ Engadiner Gerstensuppe 10.50 スイスフラン。
(約 1400 円)。
この麦のスープはコンソメスープのこともあるけれど、今回は牛乳が入っている。クリームも入っているのだろうか、コクがあり濃厚であるが、シチューではない。
具の刻まれた肉は、この辺りの名物である干し肉だろうか。噛みしめるとじんわりと旨味が出てきて、スープ全体を締めてくれる。
表面の粘りがスープの滋味を吸っている麦は、ぷちぷちとした食感が楽しめる。
何ともやさしい味である。
メインはグラウビュンデン風ラビオリ Ravioli Bundner Art 20.00 スイスフラン(約 2700 円)。
ホームメイドのラビオリはこの店の名物である。イタリア国境近くのエンガディンは、イタリア文化が入っているのだ。
脂の少ないあっさりした肉詰めのラビオリにはバターが絡めてあり、ラビオリは淡泊であるが、乗っている生ハム・くるみ・セージがアクセントを加える。生ハムは少し乾燥されており、味が凝縮されている。
ワインもグラウビュンデンのピノ・ノワール。あっさりしているのに、少し野性味を感じる味で、生ハムの香りと合う。
このあたりはフェーン現象で温度が上がり、いい葡萄が取れるのだという。関係ないけど、フェーン、というのはスイスドイツ語からきているらしい。
デザートはエンガディン風ナッツタルト Engadiner Nusstorte 7.00 スイスフラン(約 1000 円)。僕あまり甘いもの好きじゃないんだけど、この店はウマいので、試したくなった。
蜂蜜とカラメルだろうか、ヌガーのようになった具が、サクサクとしたクッキーのような生地と混じり合い、ナッツの香ばしさが引き立っている。うん、いいね。
Restaurant Central:★★★★☆(土地のものが食べられて、しかもかなりうまい。店の雰囲気もスイスの田舎風で、かなり楽しめる)
宿に戻り、シャワーを浴びる。
温度設定がなくて、お湯が出ず、死ぬかと思ったが、痩せ我慢してざぶざぶと洗う。
アフリカ帰りがこんなことでへこたれるか!
さっぱりしたところで蛇口を閉めたら、蛇口自体が回転することに気付く。なぬ。あっ、蛇口をひねると水が出て、蛇口を回転させると温度が変わるのか!書いといてくれえ!
宿の Wifi はあるんだけど、使えず。電車の都合で SIM も買えなかったので、思いがけずデジタルデトックスをしてしまった。
夜は 23 時頃まで明るく、教会の鐘の音が鳴り響いていた。今夜は 0 度近くまで下がるらしい。
半月が空を照らしていた。
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