20210515 初のサブサハラは遠かった
【東京~ドーハ~ヨハネスブルグ~マプト】
今回,僕の出張先はモザンビークの首都マプト市.初めてのサブサハラ.
サハラ砂漠よりも南側のアフリカはサブサハラと呼ばれ,アフリカらしいアフリカ,ということになっている.
僕はアフリカ大陸は,モロッコとスーダン,つまり北部しか行ったことがないので,サブサハラは興味津々である.しかもモザンビークは元ポルトガル領.ラテン系は食事が美味しいと信じているので,楽しみである.
今回は南アフリカのすぐ北にあるこの街までの旅の話を書こうと思う.
思い起こすところ,まず成田への道.
水天宮前からエアポートリムジンに乗ると,他に客がいない.こんなでは,走らせた方が損をするというものだろう.
バスの中でフライトスケジュールを見ながら,時差ぼけしないように,いつ寝るか策を練る.
成田発 5/15 22:30
◆成田からドーハ: 11時間半
ドーハ乗り継ぎ 4:00-7:35: 3時間35分
◆ドーハからヨハネスブルグ: 8時間20分
ヨハネスブルグ乗り継ぎ 14:55-19:10: 4時間15分
◆ヨハネスブルグからマプト: 1時間10分
マプト着 5/16 20:20 (日本時間 5/17 3:20)
計 28時間50分
(ちなみに帰りは 41 時間ちょうど.半分は乗り継ぎ時間だけど)
成田からドーハは,飯を食ったら寝て,適当な時間に起きて,飯を食えば,8 時間くらい寝られるのではないか.ドーハに着くのが日本の昼頃.空港で寝るのは寝過ごしそうで危険なので,ラウンジで仕事でもしていよう.
ドーハからヨハネスブルグが日本の午後なので,数時間長めの昼寝でも取ればいいか.
うむ.完璧.おのれの計画性の高さを賞賛したい.
成田空港第二ターミナルで降りると,バスの表示は回送になった.そうか,帰国者は公共交通機関を使えないので,帰路も客なしなのか.
空港は閉じている店も多く,閑散としている.
今回はカタール航空.カタール航空のビジネスは非常にいい.正直,申し訳ない気がする.誰にだか分からないけど,色んな人に.
ただ,日程的にカタール航空しかなかったし,弊社の規定で年齢と距離でビジネスを使えるか決まってくるのだ.僕のような年寄りは,ビジネスになることが多い.有り難い.
手荷物はビジネスとエコノミーだと量に差があるが,持ち込めない荷物に関しては変わらないようだ.当たり前か.
手荷物の範囲で気になる点があった.機内に持ち込めない荷物の中に「刃渡り6センチ以上のナイフ,刃元から刃先まで6センチ以上のはさみ」と書いてある.
あれ?それって 6 cm 未満なら持ち込めるっていうこと……?「切断に使用されるもの(斧、手斧、大包丁など)」という記載もあるが,大きくない包丁ならいいのか……?
いずれにしても,手指消毒用のアルコールは 100 mL に小分けすれば大丈夫そう.免税店で買った酒が持ち込めるんだから,そんなものか.
可燃性の液体および個体の例としては,軽油・重油・塗料・マッチが挙げられている.
いやそこまでして手荷物にこだわる必要はないんだけど.なんか面倒くさいんだよね,荷物預けるの.
機内で何が必要になるか分からないし,ロストバゲージで立ち往生したことあるし.
寒いエリアだと荷物がかさばるので,預けるのも止むなし,という気はするけど.
カウンターでチェックインをする時,係員が「ただいま新型コロナウイルスの為に,ラウンジが閉じておりまして……」と申し訳なそうにいう.何かと思ったら,ミールクーポン 5000 円分をくれた.
これ,どこで使えるんですか,と聞くと,更に申し訳なさそうに「今の時間帯はスターバックスさんと吉野屋さんだけなんです……」という.なるほど,なるほど.なるほど……?
取り敢えずスタバで大きいコーヒーとソーセージマフィンを買った.人生初,ベンティサイズのコーヒー.これ,600 mL くらいあるらしいね.
くりくりとした目の,可愛らしい店員さんがミールクーポンを見て「保存の効くものを買って行く方もいますよ」とパッケージされたクッキーを勧めてきた.折角なのでいくつか購入.
「うちと吉野屋さんしかやっていないんですよね……」とこれまた何故か申し訳なさそうな顔.
ここまで来れば,吉野家にも行くしかあるまい,と牛丼を食いに行った.
ダメ元でビールも注文したら,アルコールは 20:00 までの提供だと断られた.ぎりぎりアウト.でも 20:00 までなら提供していたということか.ここは東京ではなく千葉だから,アルコールの提供が禁止されていないのだな,と一人で納得.
なお,吉野家は 24 時間営業だが,21:00-5:00 はテイクアウトのみ.
店を出る時,JAL の若い女性地上職員二人が談笑しながら入っていった.仕事上がりだろうか.他に食べるところないもんね.やや気の毒.
カタール航空 807 便.機体は B777-300ER.
ビジネスクラスは一列に四席のみのラグジュアリー仕様.しかも目の高さほどのドアが閉まるようになっていて,半個室になる.ネットカフェみたいな感じ.配られたパジャマに着替えるのも躊躇がいらない.
シートはもちろんフルフラットで,掛け布団と敷布団をくれる.カタール航空,素晴らしい.
添乗員は不織布のガウンをして,全員ゴーグルと手袋をしている.
各席にはマスクと手袋,ハンドサニタイザーが置かれていた
アメニティグッズに歯ブラシは入ってないが,トイレに置いてある.キャビンアテンダント曰く「いくらでも持っていってください.たくさんありますから!」
客が少ないせいか,添乗員が足繁く通ってくれて,モザンビークのマプトに行く,と言ったら「シーフードが美味しいんですよ.白い砂浜がきれいで……」と教えてくれた.
客がどの程度いるのか聞いたら,1/4 程だそうだ.
「同僚も結構退職になって…….私もいつクビになるか分かりません」「でも能力を買われて残っているんですね」「いえそんな会社じゃないんです.運ですよ,運」
機内安全ビデオはサッカーチームによるもの.前に立ったチームメイトの背中を前の座席に見立てて非常体勢を取ったり,ロッカールームに酸素マスクが降りてきたりするのがコミカルである.
インターネットは高度が出てから衛星回線が使えて,1 時間は無料.それ以降は 10 ドルのみで着陸まで使える.便利な世の中になったものだ,といいたいところだが,機上にいたので,という言い訳が出来ずに働かなければいけないようで怖い.
以前アカウントを作ったので,メールアドレスと名字だけで使用可能となった.
離陸後しばらくして布団にくるまり横になったが眠れない.
成田で食い過ぎたので,搭乗後の食事を断ったのだが,あれが睡眠リズムを崩してしまったのか.
あっちを向いたり,こっちを向いたり,余分の枕をもらって体勢を整えてもみたが,睡魔が襲ってこない.
ネットも不通になってしまった.くっ……!
インド北部 Nagpur 上空.経路の 2/3 ほどを過ぎたところで諦めて,一旦布団から出た.
何か腹に入れようと,軽食の寿司を頼んだ.この便の食事は,和食かパスタなどの西洋料理のみで,折角カタール航空なのに,中東を感じさせるものはない.多国籍風なところが正に中東ということか.
しばらくして南天の葉を乗せて恭しく寿司が運ばれてきた.
いくらの軍艦巻き,えび,かんぱち (?), まぐろ (?), 巻き寿司,卵焼き.
直方体の酢飯はボソボソしていて,魚の鮮度も悪く,スーパーの寿司より美味いとは言い難い.しかしワサビの香りはよく,何より高度一万メートルだ.文句を言ってはバチが当たると,有り難く頂いた.
眠気を誘うためにビールも頼んだ.Stella Artois と Leffe. 軽快な Stella より深みのある Leffe の方が好み.
だが,結局ドーハまで一睡もできなかった.リムジンで立てた睡眠計画は何だったのか.
しかも恐ろしいことに眠くない.ドーハ到着は日本時間午前 11:00. 時差ぼけしそうだなーー.
さて,ドーハ空港."transfer" の文字を追いかけていけば,乗り継ぎ便のセキュリティチェックに至る.そこを出てすぐのエレベーターで3階に上がるとカタール空港のラウンジがある.
中に入ると,大きな銀色のモニュメントが目に入る.右手に噴水,左手に広場.噴水の向かい側にロッカールームと休憩室がある.
広場を横切り奥に行くとビジネスセンターがあり,その奥にまた休憩室.
ビジネスセンターの奥の休憩室は一つのブースに 2-4 台の寝椅子があるのに対して,ロッカールームの方は 1 ブースに寝椅子 1 台のみなので,一人旅ならこちらの方が落ち着く.僕は面倒くさかったので借りなかったけれど,毛布も借りられるようだ.
一眠りしようと思ったのだが,眠りに落ちそうになるたびに目が覚めてしまう.疲れているのかなぁ.しばらくうとうとしたのち,2階にあるレストランに行った.
成田のソーセージマフィンと牛丼がまだ効いているのか,食欲がないが,僕のけち臭い根性が働いて,何か食わずにはいられない.
個別の容器に入ったブッフェからフムスと Grainex Bread and Lavosh (カリカリしたパン)と果物を取り,温菜からは鶏のソーセージとマッシュルームのみ貰った.サンバール (南インドのスープ)とか粥 (Congee) のほか,メダメス(中東のそら豆の煮込み)もあったので,帰路で食欲があることを期待.
程いい時間であったので,ラウンジを出て,ゲートへ向かった.朝 6:00 だというのに店は全て開いている.COVID-19 以前と比べるべくもないだろうが,結構客もいる.
マスクを二重につけている旅人も多い.二割はいるのではないだろうか.フェイスガードやゴーグルをつけている者もおり,日本の街角よりは慎重に見える.
ドーハからはカタール航空 1367 便.機体は A350-900. 成田からのものより一回り小さく,ビジネス席は斜めの配置でこじんまりしていて,半個室にはならないが,フルフラットにはなる.客の入りは二割程度.
インターネットは日本からの便と同じく,1時間無料,10 ドルで使い放題.
席に座ると,眠さでめまいがしたが,大麦のスープと,サーモンとホタテのサラダを食べてから寝ることにした.何だかダイエットしてる人か,意識高い人みたいだ.ダイエットしている意識高い人でもいいんだけど.
両方とも旨し.野菜とベーコンの入ったとろみのある大麦のスープは,添乗員は "Borsch Barley です.多分南アフリカのスープじゃないかと……" と曖昧なことを言う.でもGoogleで Borsch Barley を調べると,ビーツを使った普通のボルシチが出てきちゃうんだよなーー.
2時間ほど寝てから仕事した.余り寝ると,夜眠れなくなって時差ぼけがひどくなるからね.
ランチは鴨のコンフィ.さすがに皮がパリパリというわけにはいかないが,濃厚な鴨の味は楽しめた.
ソースはウスターソースを彷彿する甘酸っぱいもので,意外とこれが,少し緊張感の欠けた鴨肉を整えてまとめ上げてくれる.
カルダモンチャイとエスプレッソを飲んで終了.
食後はネットのつながりが悪いので,仕事は諦めて本を読んだ.
ヨハネスブルグに着くと,暗い廊下をどこまでも歩かされた.バゲージクレイムの横を過ぎたところでパスポートコントロールがあった.簡単なチェックを受けて更に暗い廊下を歩くと、これまた暗い広い部屋にトランスファーデスクが並んでいる.ヨハネスブルグ空港,陰鬱な印象….しかもカタール航空のデスクには誰もいないので,奥へ進むことにした.
不安になる程人が少ない.
セキュリティチェックで鞄をレントゲンに通すと,店のようなものが見え始めた.
しかし,8 割以上の店はシャッターが閉まり,やはり薄暗い.
嫌な予感がしつつ,カタール航空のラウンジを探して歩くと,最も奥まったところに Aspire ラウンジというところがあり,カタール航空のマークが.やった!Wifi と飲み物が手に入るぞ!
……とドアを開けようとすると「ロックダウンでやってません」との無情な張り紙が.ええええ~~.
がっくりして来た道を戻りつつ,他のラウンジで入れるところはないか探した.
そうしたら masch onzha ラウンジに,プライオリティパスで入れるではないか!最近あまり使っていなかったけれども,旅人のたしなみとしてプライオリティパスを持っていてよかった……!
ネットにどっぷり浸かっている身としては,ネットが使えないのはどうにも不便である.
狭いけれども小ぎれいで,パッケージされた食べ物が色々置いてある.
ビールやワインもあったのだが,疲れ過ぎていて酒を飲みたいと思わなかった.僕としては異例の事態.
家族の「たまにはお前,それぐらい疲れろよ」という声が聞こえてきそうだ.
仕事の書類を読むうち,搭乗時刻が迫ってきた.
これ以降いつ,ものを食べられるかわからないので,無理にツナサンドを食べようとしたが,胸が焼けてきて,一切れで諦めてしまった.
まぁ,美味しくなかったのもあるけど.
ラウンジの Wifi で職場に最後の連絡をしたのち,ゲートへ向かった.
ヨハネスからは,モザンビーク航空 TM0306 .
搭乗口からバスで着いた機体はいかにも小さく,僕の機内持ち込み用のトランクが乗せられるのか不安になった.先方もそう思ったらしく,ラベルを持った女性が近づいてきて,カバンを預けろという.「ノーマニー,ノーラップトップ,ノーバリュアブル?」
乗り込むと,1 席のみの列とと 2 席の列が並び,2席の頭上にだけ荷物置きがある.それも小さなもので,とてもトランクが入るような代物ではない.小さなトランクを持ち込んだ人々は前の座席の下に入れていた.
3 席×19 列,57 人乗りの飛行機は,滑走路を走り始めた.安全のしおりは前の席に貼り付けてあり,機体の種類など書いていない.
座席はほぼ満席.僕以外にアジア人はいなそうだ.席だけでなく通路も狭く,体格のいい男性が窮屈そうに首を曲げたうえ,体を斜めにして通路を歩いていた.
機内の照明が消され,ノンスモーキングとシートベルトサインのランプだけが闇に光っている.
ふいに走るスピードが速くなり,機体は勢いよく上を向いた.
大きな機体も小さな機体も,飛ぶ理屈は変わらないと思うのだが,小さいと,ちょっとした問題が大きな影響を及ぼしそうで,どうもおっかない.
例えば,通路で誰か飛び跳ねても,ジャンボジェットはどうということもないだろうが,57 名乗りの小さな機体では,バランスを崩して墜落してしまうのではないかと思うのだ.
だから僕は,誰かが通路で飛び跳ねようとしたら,飛び出していって床に突き飛ばしてやろうと思って身構えている.どう考えてもそっちの方が影響ありそうだけど.
薄っぺらい翼がペラペラと舞ってバランスを取っている.その向こうにヨハネスブルグの街.
来る時は広大な農地に目を奪われていたが,暗くなってみると,地平線まで明かりが広がっていて,ヨハネスという街の広さを感じた.
高度を上げ,水平飛行となったところで,驚くべきことが.
なんと!機内食が配られたのだ!ついさっき,最後の晩餐だと思ってツナサンドを口に押し込んだところなのに!たった1時間 10 分のフライトなのに!
見ると,丸いバンズにハムの挟まったサンドイッチと,トロピカルフルーツジュースだ.正直,腹は全く空いてないので,サンドイッチは鞄にしまおうかと思ったが,検疫で取り上げられたら勿体無いので食うことにした.
心を無にして口に運ぶ.咀嚼,咀嚼,嚥下.
幸い,マーガリンが程よいアクセントになって,さっきのツナサンドよりは美味い.
食える時に食え…….寝られる時に寝ろ…….生き延びるために……!
まぁ,出張で寝不足なだけだけど.
食い終わったころにマプトに着いた.
上空から見るマプトの街は,大きなビルもなく,首都というよりも,地方都市といったイメージ.
家々の間は密集しておらず,余裕のある配置に見えた.
マプト空港に降りると一旦二階で PCR の陰性証明書を確認され,階下でパスポートをチェックされた.何人入国したかを数えているようだ.
係の女性は僕のパスポートを見て「ジャパン,ジャパン……」と紙に書かれた国名を探していたが,見つからなかったようで,横の男性の紙を覗き込み,そこにもないことを確認すると,自分の紙に "Japão" と書いて,一本棒を引いた.多分,本日マプトに来た日本人は僕だけなのだろう.
その後本物のパスポートコントロール.後ろにバゲージクレイムが見える開放的な配置.「どこに泊まるのか」とだけ聞かれて,答えると,にこりともしないでハンコを押した.
出口を出ると,レンタカー会社などのカウンターが並んでいたが,全て終了していた.vodacom のカウンターもあったので,日中ならば携帯電話を借りることもできたのだろう.
SIM の販売は見つけられなかった.
ネットで調べると,Airalo社 の eSIM はモザンビークに対応していたので,検討してもいいかもしれない.幸い今回は,現地事務所が所有しているスマホを借りられたので,必要ならばテザリングを利用しようと思う.
事務所が用意してくれた車で Palm Aparthotel へ.真新しい綺麗なホテル.すしレストランやスパ,プールがある.
着いてすぐにミーティング.
疲れたなぁ.寝るぞ,寝るぞ,寝るぞ.
明日も朝から仕事だぞ……!
<世界の秘境>
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