20131231 南十字星は氷河の流れに玉虫色の光を落とす
早朝,マイクロバスに拾われて,ダニーデンを後にして,中継地であるクロムウェルにまず向かった.
天気は快晴.

町を出ると,ひたすら牧草地が広がる.

クロムウェルに近づくにつれ,風景は次第に山がちになる.

同乗する人々の多くは,サイクリングで山下りをするようだ.初夏の気候の中,山と牧草地の中を走るのは気持ちよさそうである.

クロムウェルでバスの乗り換えのついでに時間があったため,Cromwell Brew House というバーで昼食.
初日に行ったダニーデンのビール,Speights のサーバーが並んでいる.バス停周囲は,道の駅兼,新市街の中心街のようだ.ツーリストインフォメーションの横に,大きめの電気屋などが並んでいる.
Speights Steak and Ale Pie.パッケージに入っているものを温めてくれる.わざわざバーで食べるのは少しもったいなかった.

フレンチトースト,と書いてあったが,ホワイトクリームのかかったトースト.意外とうまい.

食後,周囲を少し歩いてみた.クロムウェルの近くに,ニュージーランドで最も海から離れた地点があるそうだ.
クロムウェルはもともと,Clutha 川と Kawarau 川の合流地として有名で,二つの色の川が混じり合っていたそうだ.1862 年に金が見つかったことにより,町が発展する.1990 年代早期に合流部は埋められ,ダムが作られる.合流部のあった部位に作られたのが,現在の旧市街だという.あまり時間がなかったので,バス停の周囲しか行かなかったが,時間があれば,旧市街にを訪れても面白いかもしれない.
バスを乗り換え,北に向かう.ワナカ湖,ハウェア湖と大きい湖を過ぎていく.湖の向こう側は,マウント・アスパイアリング国立公園が広がる.
プカキ湖の南端に沿ってバスは更に進む.北に見えるマウント・クックもまた国立公園に含まれる.ニュージーランド最高峰.
このあたりの川も湖も,明るい黄色がかった独特のターコイズブルーであり,特にプカキ湖の色は素晴らしかった.

この日は天気が良かったので,ターコイズブルーであったが,空の色によって,様々に変化を見せる.これらの色は,Rock Flour, あるいは Glacial Flour と呼ばれる,氷河に含まれる岩石 (石英,長石など) によるもので,粒が小さいために,沈殿せず,水の中に保たれることが特徴らしい.湖ではターコイズブルーに見えることが多いが,川を流れている際は,灰色,明るい茶色,青から緑にかけての虹色,乳白色など,様々に変化する.
休憩した途中町.この Red-billed Gull (赤嘴銀鴎) は,ニュージーランド原産のカモメで,至る所で見かける.

ホテルは湖畔に面した Goldwin.ガイドブックの評判は良かったが,僕の泊まった部屋は古いアパートのような雰囲気だった.
湖が望める部屋であっただけ,好しとしよう.

マオリ語で「夜の寝床」を意味するテカポは,InternationalDark-SkyAssociation によって認定された星空保護区で,大きな天文台もある.
星空観察ツアーに昨日メールを入れておいたが,ネット環境がなくて返事が確認できなかったため,直接店に寄った.
既に満員,キャンセル待ちも既に 3人.出発 5 分前に来れば,空きがあれば参加できるというので名前を書いて宿で休んだ.
そもそも天気が曇りの合間に小雨が降っているのだ.夜の予報も曇り時々晴れと,星が見られるとは限らない.
宿は古くて狭かったが,窓からの湖の眺めは美しい.少しずつ空が明るくなるに連れ,湖面が鼠色から碧に変化する.靄が去ると,対岸の丘の緑が輝いて見える.
テカポは小さい町なので,あまり出かけるところもなく,湖の南岸に店が数件並んだ所が中心地のようだ.
そのうちの一軒で,ラムステーキを頂いた.店員が「外しか席はないが,大丈夫か?」と困ったように聞く.こんな美しい日に外で食べられるとは,むしろ歓迎である.お供はWairara は Torlesse のシャルドネと南カンタベリーは Opihi kiwi Battler のピノノワール.

年間を通じて大きな温度変化のないニュージーランドは,一日の温度変化は大きく「一日に四季が来る」と言われる.
太陽の光が降り注ぎ,水辺から吹く風が芝生を渡り心地よい.これは初夏から盛夏に移るところだろうか.
緑の上にはカモメが寛いでいる.

何処からともなくバグパイプの音が聞こえる.人の流れを見ると,表通りを楽団が近づいて来ているようだ.半分食べた皿を置いて覗きに行った.
スコティッシュスカートで正装したバグパイプと太鼓の楽団である.晴れ始めた空に流れる曲は,遠い故国まで響くだろうか.

楽団は僕のいた庭に向かって行進を続けた.なんだ,座っていれば,見ることができたんじゃないか.
と続きを食べようとして,呆然とする.食いかけの皿の上に,カモメが群がっているではないか!
先程の店員の顔が頭を過る.

これだけ簡単に餌が手に入るなら,あとは優雅に日向ぼっこしていればいいだろう.芝生の上でゴロゴロしているカモメたちが,打って変わってふてぶてしく感じる.

ほんの数分の間に骨を残して綺麗に平らげられた皿を見ると,見事としか言いようがない.
とは言え,今夜は遅くなりそうである.腹が減っては困るので,もう一皿,リブアイステーキとチーズケーキを頂いた.

次第に秋に近づいてきた気温に,冷えてきた体を温めるため,一旦宿に戻った.
そうこうするうち,もうすぐ 22 時,星見の時間である.
ホテルのすぐ横のツアー会社で次々にバスに乗り込む予約客を横目に時間を潰したが,残念ながらキャンセルは一件のみ.
町の近くも明かりは少ないので,東京と比べれば遥かに条件は良かろうと,近くをうろつくことにした.

川を渡ってすぐの「善き羊飼いの教会」を観光がてら訪れた.入植の際に,近くの石で作られたという素朴な教会は,湖と山の為す風景に馴染むようデザインされたのだという.
17時過ぎると中は見られないが,だいぶ強くなってきた風を凌ぐにはいいだろうと思ったのだ.
暗くなってきた空に,小さな花火が数回.近隣の住民があげたと思われる.細やかな New Year Eve.
ホテルから借りてきた毛布を巻いて,空を見上げた.目が慣れてくると,正面の北の空には,ひっくり返ったオリオンと子犬座.スバルと牡牛座.左上から右下に,光の粒が乗った旋風のような天の川.
空が澄んでいるせいだろうか,流れ星が見える時間が長く,星のまたたきが少ない.
石造りの壁の影で毛布に包まって白い息を吐いていると,ベツレヘムの星を見つけた羊飼いたちを思い出す.
教えて下さい,羊飼い達よ.貴方達が今,見た事を.

新年を迎える前に凍えてきたので,ホテルに帰ることにした.
立ち上がって反対側の空に,南十字星を探した.
天の川の端に,南十字星と,それを指し示すポインターを含むケンタウロス座.念のため,南十字星と間違えられがちという「偽十字」も探したあたりで,ロマンティックな気分は冷めてくる.
宿に帰り,温かいココアを飲む.
年越えのイベントも特に無く,静かに足音を忍ばせて,2014年は訪れたのだった.
天気は快晴.
町を出ると,ひたすら牧草地が広がる.
クロムウェルに近づくにつれ,風景は次第に山がちになる.
同乗する人々の多くは,サイクリングで山下りをするようだ.初夏の気候の中,山と牧草地の中を走るのは気持ちよさそうである.
クロムウェルでバスの乗り換えのついでに時間があったため,Cromwell Brew House というバーで昼食.
初日に行ったダニーデンのビール,Speights のサーバーが並んでいる.バス停周囲は,道の駅兼,新市街の中心街のようだ.ツーリストインフォメーションの横に,大きめの電気屋などが並んでいる.
Speights Steak and Ale Pie.パッケージに入っているものを温めてくれる.わざわざバーで食べるのは少しもったいなかった.
フレンチトースト,と書いてあったが,ホワイトクリームのかかったトースト.意外とうまい.
食後,周囲を少し歩いてみた.クロムウェルの近くに,ニュージーランドで最も海から離れた地点があるそうだ.
クロムウェルはもともと,Clutha 川と Kawarau 川の合流地として有名で,二つの色の川が混じり合っていたそうだ.1862 年に金が見つかったことにより,町が発展する.1990 年代早期に合流部は埋められ,ダムが作られる.合流部のあった部位に作られたのが,現在の旧市街だという.あまり時間がなかったので,バス停の周囲しか行かなかったが,時間があれば,旧市街にを訪れても面白いかもしれない.
バスを乗り換え,北に向かう.ワナカ湖,ハウェア湖と大きい湖を過ぎていく.湖の向こう側は,マウント・アスパイアリング国立公園が広がる.
プカキ湖の南端に沿ってバスは更に進む.北に見えるマウント・クックもまた国立公園に含まれる.ニュージーランド最高峰.
このあたりの川も湖も,明るい黄色がかった独特のターコイズブルーであり,特にプカキ湖の色は素晴らしかった.
この日は天気が良かったので,ターコイズブルーであったが,空の色によって,様々に変化を見せる.これらの色は,Rock Flour, あるいは Glacial Flour と呼ばれる,氷河に含まれる岩石 (石英,長石など) によるもので,粒が小さいために,沈殿せず,水の中に保たれることが特徴らしい.湖ではターコイズブルーに見えることが多いが,川を流れている際は,灰色,明るい茶色,青から緑にかけての虹色,乳白色など,様々に変化する.
休憩した途中町.この Red-billed Gull (赤嘴銀鴎) は,ニュージーランド原産のカモメで,至る所で見かける.
ホテルは湖畔に面した Goldwin.ガイドブックの評判は良かったが,僕の泊まった部屋は古いアパートのような雰囲気だった.
湖が望める部屋であっただけ,好しとしよう.
マオリ語で「夜の寝床」を意味するテカポは,InternationalDark-SkyAssociation によって認定された星空保護区で,大きな天文台もある.
星空観察ツアーに昨日メールを入れておいたが,ネット環境がなくて返事が確認できなかったため,直接店に寄った.
既に満員,キャンセル待ちも既に 3人.出発 5 分前に来れば,空きがあれば参加できるというので名前を書いて宿で休んだ.
そもそも天気が曇りの合間に小雨が降っているのだ.夜の予報も曇り時々晴れと,星が見られるとは限らない.
宿は古くて狭かったが,窓からの湖の眺めは美しい.少しずつ空が明るくなるに連れ,湖面が鼠色から碧に変化する.靄が去ると,対岸の丘の緑が輝いて見える.
テカポは小さい町なので,あまり出かけるところもなく,湖の南岸に店が数件並んだ所が中心地のようだ.
そのうちの一軒で,ラムステーキを頂いた.店員が「外しか席はないが,大丈夫か?」と困ったように聞く.こんな美しい日に外で食べられるとは,むしろ歓迎である.お供はWairara は Torlesse のシャルドネと南カンタベリーは Opihi kiwi Battler のピノノワール.
年間を通じて大きな温度変化のないニュージーランドは,一日の温度変化は大きく「一日に四季が来る」と言われる.
太陽の光が降り注ぎ,水辺から吹く風が芝生を渡り心地よい.これは初夏から盛夏に移るところだろうか.
緑の上にはカモメが寛いでいる.
何処からともなくバグパイプの音が聞こえる.人の流れを見ると,表通りを楽団が近づいて来ているようだ.半分食べた皿を置いて覗きに行った.
スコティッシュスカートで正装したバグパイプと太鼓の楽団である.晴れ始めた空に流れる曲は,遠い故国まで響くだろうか.
楽団は僕のいた庭に向かって行進を続けた.なんだ,座っていれば,見ることができたんじゃないか.
と続きを食べようとして,呆然とする.食いかけの皿の上に,カモメが群がっているではないか!
先程の店員の顔が頭を過る.
これだけ簡単に餌が手に入るなら,あとは優雅に日向ぼっこしていればいいだろう.芝生の上でゴロゴロしているカモメたちが,打って変わってふてぶてしく感じる.
ほんの数分の間に骨を残して綺麗に平らげられた皿を見ると,見事としか言いようがない.
とは言え,今夜は遅くなりそうである.腹が減っては困るので,もう一皿,リブアイステーキとチーズケーキを頂いた.
次第に秋に近づいてきた気温に,冷えてきた体を温めるため,一旦宿に戻った.
そうこうするうち,もうすぐ 22 時,星見の時間である.
ホテルのすぐ横のツアー会社で次々にバスに乗り込む予約客を横目に時間を潰したが,残念ながらキャンセルは一件のみ.
町の近くも明かりは少ないので,東京と比べれば遥かに条件は良かろうと,近くをうろつくことにした.
川を渡ってすぐの「善き羊飼いの教会」を観光がてら訪れた.入植の際に,近くの石で作られたという素朴な教会は,湖と山の為す風景に馴染むようデザインされたのだという.
17時過ぎると中は見られないが,だいぶ強くなってきた風を凌ぐにはいいだろうと思ったのだ.
暗くなってきた空に,小さな花火が数回.近隣の住民があげたと思われる.細やかな New Year Eve.
ホテルから借りてきた毛布を巻いて,空を見上げた.目が慣れてくると,正面の北の空には,ひっくり返ったオリオンと子犬座.スバルと牡牛座.左上から右下に,光の粒が乗った旋風のような天の川.
空が澄んでいるせいだろうか,流れ星が見える時間が長く,星のまたたきが少ない.
石造りの壁の影で毛布に包まって白い息を吐いていると,ベツレヘムの星を見つけた羊飼いたちを思い出す.
教えて下さい,羊飼い達よ.貴方達が今,見た事を.
新年を迎える前に凍えてきたので,ホテルに帰ることにした.
立ち上がって反対側の空に,南十字星を探した.
天の川の端に,南十字星と,それを指し示すポインターを含むケンタウロス座.念のため,南十字星と間違えられがちという「偽十字」も探したあたりで,ロマンティックな気分は冷めてくる.
宿に帰り,温かいココアを飲む.
年越えのイベントも特に無く,静かに足音を忍ばせて,2014年は訪れたのだった.
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