20200923 外の宮にて美しさを堪能する



中心となる正宮 (しょうぐう) は参拝客には見づらくなっており,拝殿の横から一部を眺められるのみ.
個人的なお願いをするところではないと聞いていたので,人類について祈った.

伊勢神宮の社殿は,仏教建築が入る前の様式なので,屋根は瓦ではなく,茅葺きである.柱を地面に埋めた掘立式で,素木 (しらき) の高床式.


内宮と外宮は千木 (屋根についた羽のような形の飾り) の形と鰹木 (屋根の上に乗っている木) の数が違う.
なお,古い時代の建築様式のため,拝殿の鈴はない.

茅葺きと素木の社殿を美しいまま保つ為,20 年に一度遷宮と呼ばれる建て替えを行なっている.この際の土地が横にあり,今の土地と交互に使用される.

メインである正宮と別宮 (正宮に次ぐくらいの格の高い神社) 3 つをお詣りして大体一時間.一つ一つの社殿は小さく,意外とあっさり回ることができる.

北御門から出る前に脇道に入り,度会国御神社 (わたらいくにみじんじゃ: 外宮をつかさどっている度会氏の祖霊を祭る神社) と大津神社を詣でる.森の中に入っていくような参道にはひと気がなく,神聖な雰囲気が漂っている.

参拝後は起矢食堂という店へ行き,伊勢うどんを頼んだ.
伊勢うどんは遠くからの参拝者の腹を気遣い,柔らかいというが,起矢食堂の麺は思った以上に腰があった.しかし表面は茹でた餅のようにふかふかしており,これが黒いたれによく絡む.たれが黒いのはたまり醤油を使っているからだが,出汁が入っているので存外辛くない.勧められたので七味もかけてみたが,味に変化がついていい.


おすすめ度: ★★★★★
(名物で美味しかった.惜しむらくはアクセスが悪いところだが,行く価値はある)

午後はせんぐう館という外宮の博物館へ行こうと思っていたら,休み明けで今日は休館日だった.残念.

仕方がないので外宮のすぐ前にある観光案内所で相談したところ,河崎という場所を勧められた.ここは,室町から江戸時代に伊勢詣が流行った頃,武士をもてなす為に集まった商人の町である.物資は横を流れる勢田川を船で運んだ.

江戸時代の始めにここで使われた山田羽書という紙幣は日本最古という説があり,世界でも二番目に古いようだ.観光案内所の方は「そんな古い紙幣が民間で作られたというのがすごいじゃないですか」と付け足した.

外宮から約 20 分歩き,古い木造建築の町屋が並ぶ河崎の雰囲気のいい一帯に着いた.町並みは町屋が半分くらい.町屋の多くに看板があり,生業や建物の特徴がうたわれている.


家の新旧を問わず,ほとんどの家の玄関の上に「笑門」または「七福即生 七難即滅 蘇民将来子孫家 (之) 門」「八衛比賣神 八衛比古神 久那斗神」と書かれたしめ縄が飾られていた.近くにあった自転車屋の親父に聞くと,正月になると買い替えて,一年飾っておくのだという.特別な名前はなく,「しめ縄」と呼んでいるとの由.


本当は伊勢河崎商人館という博物館に行きたかったのだが,これも閉まっていた.出来れば観光案内所で教えて欲しかった….

駅の方に戻る途中の山の中にある,伊我理神社を参拝 (井中神社が同座).両社とも外宮の末社で,賽銭箱もない祠のような小さな神社だけれど,素木の鳥居も社殿もごく新しい色をしていて,地面も整っていた.

イガリは,元々猪狩であり,この辺りの田んぼを荒らしていた猪から守る為に作られたらしい.

参道の入り口には車馬を乗り入れないこと,などと書かれた「定」が立っているが,神社の名前はないので,Googleを頼りに訪問.

高脚膳に乗った朝食は部屋食.


伊勢神宮 (正式には「神宮」とのみ呼ぶ) には内宮 (ないくう) と外宮 (げくう) があり,外宮は,内宮で祀られている天照大御神の食事を司る,豊受大御神 (とようけのおおみかみ) が主神で,毎日二度,他の神々に食事を供える儀式が行われている.転じて豊受大御神は広く産業の神である.

内宮は外宮の後に行くものらしいので,今日は外宮へ行くことにした.

参道の杉は高く,静謐な雰囲気を醸している.


次いで山末神社へ.これも同じく小さなお社.この神社の面白いのは,参道を進むと右手に社殿,左手に鳥居があるのだが,鳥居が山肌の水路のすぐ前に建てられているので,参拝するには水路との隙間を縫って鳥居の前に立たなければならないことだ.


更に歩いて,駅近くにある月夜見宮へ.外宮の四つめの別宮.


一旦宿に戻り,しばし休憩.既に2万歩ほど歩いている.

夕食に向かう道すがらアーケード街を通ったが,まだ 19:00 前だというのに, 9 割の店が閉まっている.日中は開いていたのだろうか.


夜は豚捨なる肉屋に併設された,若柳 (わかやぎ) という牛料理の店へ.牛が旨すぎて,豚を捨てる,の意と聞いたが,どうも初代の名前が捨吉で,最初に売っていたのが豚肉だかららしい.

若柳は当初西洋料理豚捨として開業し,昭和初期にすき焼き旅館となった (今は料亭のみ).

旅館となるまでの間,カブトビアホールであった縁で,復刻版のカブトビール二種 (明治・大正) を飲むことができる.

1杯目は地ビールの神都ビール.ペールエールのようなフルーティーな味.
復刻大正カブトビールは,麦の香りが立つラガービール.

8 mm 程の厚手の肉と野菜を,中居がタレにつけて網の上で焼いていく.牛は松坂牛ではなく伊勢牛.
特上ロースは一人前 4 枚,ヒレは 3 枚.
ヒレは脂は見えないのに,噛み締めると肉汁がほとばしる.箸で切れるほど柔らかい.ヒレの方が高いが,特上ロースでも十分旨し.
ちなみにヒレは横の精肉店や支店でも売っていない.


最後に飯と赤だし,デザート.
さすがに食い過ぎた.
割下を使わない関西風のすき焼きもある.

おすすめ度: ★★★★★
(ただしお高め)

若柳の名は,慶光院という尼寺の方が名付けたそうだ.
慶光院は伊勢神宮の遷宮復活に働きかけた,神宮と所縁の深い寺で,外宮の遷宮の際に使われる木材などを運ぶ「陸曳 (おかびき)」では一番に慶光院曳が行われる.

若柳の中居さん情報では,外宮・内宮の前に二見興玉神社に,後に金剛證寺に行くのが昔からの詣でるものなのだという.

店には川曳と陸曳の絵が飾られていた.









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