20220513 この道の先に

【フィアナランツァ~アンブシトラ~アンチラベ~アンタナナリボ@マダガスカル】
本日移動日。距離が長いので 5:00 起き。夜型には辛い……。

明るくなり始めた町は、すでに賑わい、子供たちは学校へ向かっている。これから売りに行くのだろうか、頭に大きな籠を乗せた人々。店先で揚げたパンのようなものを食べる男性。
ここには日常の営みがある。


昨日の残りのビスケットと水で朝食。
街を出るとまた、田園風景が続く。ときどき村。


「あの家は、一階が墓で、二階が家なんだ」
通訳のルヴァが突然、村の中の一軒を指す。
残念ながら僕はそれを見ることが出来なかったのだけど、彼らの死生観を感じるようで興味深かった。

マダガスカルでは人口の 52% が伝統宗教を信じており、先祖と墓を重要視する。地下にある墓はとても大きいらしい。

誰かが亡くなると、遺体は布に包まれ、墓の中の決められた場所に埋められる。
5~7年後に骨を取り出し、新しい布で包んだのち、ファマディハナ Famadihana と呼ばれる儀式を行う。先祖の幸福と一族の繁栄を祈る儀式である。

この儀式は家族が大金を使って催す大規模なもので、ファリビーミナカと呼ばれる食事が振る舞われ、ダンスが行われる。
ファリビーミナカは、ご飯にこぶ牛や豚など、脂っぽい肉を混ぜたもの。

ファマディハナの夜は、夢に故人が出てくるという。

宴の後、新しい布で包まれた遺骨は、墓の中の棚にしまわれる。この棚は家系図によって決まった場所があるらしい。

国民の 41% を占めるキリスト教徒の場合、ファマディハナをする人と、しない人がいる。これは、所属している教会の牧師や神父によっても解釈が異なる。

「いずれにしても、マダガスカルでは、宗教はセンシティブ・トピックだね」
「あ、なんかゴメン……」
「いや、全然問題ない。文化の一部だから」

更に山を過ぎ、村を過ぎ……。
ブヒブサと言われるエリアで、ルヴァがぼそっと呟く。
「子供の頃、この辺りに住んでたんだよね……。二年間くらいだけど」
「へぇ……自然豊かなところだね(建物いっこも見えないんだけど)」

うん。でも安全じゃない。ダハールと呼ばれる山賊がでる。学校に行く時、"ダハールが出た!"という声が聞こえたら、すぐ隠れたものだよ」
「今でもいるの?」
「いる。だから、夜この辺りを車が走る時は、一台では走らない」

小さな村に立ち寄ったときの伝統的な家。
煉瓦の上に泥を塗って作ったり、煉瓦と木の柵で作ったりする。
小さい窓と、鋭角な三角屋根が印象的である。


「そういえば、前、別の通訳に、困った時に誰に相談するのかって聞いたら、家族だって即答だったんだよね。村の指導者とか、宗教的指導者じゃなくて、家族だって。それはキリスト教徒でも一緒?」
「相談の内容によるかなあ。家族のトラブルなら、教会に相談できる場所があるから、そこに行ったり、牧師に相談したり。経済的な問題なら、家族だと思う。家族は助け合って生きている」
「死の恐怖に襲われたら?」
「宗教的指導者かな」
「伝統的宗教を信じている人は?」
「伝統的治療者(witch doctor)じゃない?」

アンブシトラの町に着いたのは10:30 頃だった。
町外れで ムファクンドロ Mofo Akondro(揚げバナナ)600 アリアリを購入。ドーナッツ生地の中にバナナが入っている。柔らかくなったバナナが甘くて素朴な味。


昼はアンチラベ。「来るときに行った店でいい?」とルヴァが聞くので「いや、別の場所で!」と答えて困らせた。


結局「Razafimamonjy」で Crabe farci(カニの詰め物)18500 アリアリ(約 600 円)と炭酸水を注文。入口からは想像をつかないほど広い店内には、ライブステージまである。

Les Plats Malagasy と書いてあるのは一部のメニューだけなのだけれど、以降のメニューも全てマラガシーらしい。メニューはフランス語名なので、余り「らしく」ないけど、色々あるので見ていて楽しい。
メニューには Cuisse de Nymphe(カエルの足)もあったが、本日はなし。


かには 10 cm ほどのものが二杯きて、甲羅の中には、カニの身と豚のひき肉、卵、キノコなどが入っていて、殻ごと衣をつけてフライにされている。淡白だけれど、添えられたレモンや、サカイをつけて食べると大変味わい深い。
身のたくさん入ったカニチャーハンのご飯抜きみたいな感じ。

Razafimamonjy:★★★★☆(カニは美味しかったし、マラガシーが充実してるのが嬉しい)

さて、アンタナナリボに向かって出発!

「あれは何?」
山をいくつか過ぎた村で、道路側に人が集まってるのでルヴァに聞いてみた。
「結婚式」

マダガスカルの結婚式のステップも面白い。

①彼氏が彼女の家族を訪れ、自己紹介をして、結婚の許しをこう。その際、尊敬の証として父親や兄弟にお金を払う。

②フディウンジ:新郎が一族と新婦の家を訪れる。このとき、新郎・新婦とも代理人(弁士:orator)を立て、代理人同士がスピーチの掛け合いをする。
「ぜひ嫁に来てください」「この娘は安くないのよ」「じゃあこれくらいで」などというような内容で、金額を交渉し、新郎が新婦家族にお金を払う。結納金みたいなものだろう。
ちなみにこの金額はあらかじめ決めてあるわけではなく、その場で決まるらしい(!)。
以前はお金の代わりに牛を贈っていた。
また昔はフディウンジが結婚パーティーの代わりだった。
なお、この習慣はキリスト教徒も行い、今でも続いている。

③婚姻届:役所で Civil wedding book にサインをして、証明書をもらう。通常木曜と土曜。金曜にすることもある。

④教会の結婚式:通常土曜日。 田舎ではいつでも結婚式をする。証人の前で結婚を宣言し、リングを交換し、祝福を受ける。

⑤結婚パーティー:アフィンドラ・フィンドラウという伝統的な曲でダンスを踊る。

伝統宗教を信じている場合は、④はなし。
再婚や経済的な問題で③のみとなることもある。

そんな話をしていると、次第に陽も翳ってきた。

道端の建物も、山の中にある断続的な村から、途切れず、郊外めいてくる。
日本からは遠く離れているのに、何だか日常に帰る気がするのは、僕が都会育ちなせいだ。
全く風景は異なるのだけれど、都会の持つ、昂然と努力を求める雰囲気に、僕は背筋を伸ばす。
努力しなくて得られるものが、自分の身の丈って気もするんだけどね。

アンタナナリボのホテルは毎回 Ibis ホテル。

みんな疲れているので、ロビーで解散。
僕は荷物を整理した後、ホテルのレストラン Amy's restaurant に来て、ここでまだ食べていない唯一のマダガスカル料理、ロマザバ(スープとご飯)28000 アリアリを頼む。


スープはイカ・エビ・白身魚(ティラピア?)が入っていて、それぞれの出汁が効いている。マダガスカルのエビは、少し臭みがあって苦手なことが多いのだけれど、ここのはそんなことはなく、素直に頂けた。更に生姜の香りが食欲を増す。
マダガスカル料理は生姜を多用している印象。

店内のステージでは、ギターの弾き語りが演奏をしている。R&B だろうか。僕、音楽詳しくないんで、よく分からないけど。

ビールは僕のお気に入りの Gold Blanche(砂糖とか香料が入ってる胡散臭いビール)。

Amy's restaurant:★★★★☆(町外れなんで、わざわざ来るか悩むけど、Ibis に泊まったら、一回くらい使ってもいいかも。マラガシーメニューは三つしかないが、食べ物は美味しい)

ふと、南の空を見上げると、あっさりと南十字星が見つかった。
僕の人生の羅針盤は、まだ正しい方位を示しているだろうか。

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