20220428 出逢うがままに導かれて
朝食は疲れていたのでスキップし、そのまま午前中は仕事。
昼はいつもの Casino で、串焼き肉のサンドイッチ、サモサとツナサンドを買った。
80 フランと格安だったミックスフルーツジュースは、ジブチ産。砂糖や香料が入っているので、味に特別感は少ないけれど、ジブチ産というだけでプレミアム。
ホテルに帰ると、モハメドおじさんがダウンタウンを見せてやるというので、少し案内してもらった。
やはりアル・ハムジ・モスク周辺がここらの繁華街のようで、ムシュ通りを歩く。
なにやら人が集まって賑やかである。ラマダンも終わりかかり、人々も活気が出てきたのだな、と思ったら違った。
10 歳くらいの女の子が二人、ケンカをしていたのだ。しかも、髪をつかんで、本気で殴りあっている。大人の男性が引き離そうとしているが、やめない。
だもので道が埋まってしまって、車を進めることができない。
何とか二人を引きずっていったと思ったら、今度は中年の女性二人が怒鳴り合い始めた。彼女らの母親たちだろうか。
埒が開かないので、僕らは車を置き、少し歩いた。
ホテルの近くの店は昼休みの時間帯は閉まっていることが多いのだけれど、ムシュ通りは開いている店も結構ある。この間はもっと閉まっていた気がするので、ラマダンの終わりが見えてきたからかもしれない。
うずくまっている人のたくさんいる通りに来た。よく見ると、路上にミシンを置いた人々がたくさんいて、一枚布から数分で貫頭衣のようなドレスを作っている。一枚縫うのが 200 フラン(約 140 円)。布代は別に 400 フラン程度(約 290 円)。
「あれはシトといって、ここらの女性がみんな、スカーフの下に着ているものだ」
「シト、ですか。スペルは?」
「S・H・I・T。Shit」
「……なるほど。ブブ Bubu と呼ぶこともあると聞きましたが」
「それはフランス語だ。ジブチではシトだ」
ついでに男性の腰布はフータ Foeta というのだと教えてくれた。
午後も仕事。
夕食はジブチ発のフライトが深夜なので、近くの Hotel Horseed にあるジブチレストランで食べることにした。Google でそれなりに評判がよかったのだ。アトランティックホテルから歩いて 10 分かからないので、徒歩。
途中声をかけられる。
「ニホン?」
「ウィ、ニホン。アッサラームアレイコム(アラビア語のこんにちは)」
ボンジュール、より、アラビア語の方がウケがいい気がしてきたのだ。
「サンボサ(サモサ)だ。見てみろよ、ここで揚げてるんだ」
なかなかうまそうである。「いくら?」
「いらない、いらない。オレたちは友達だ!」
ビニール袋にサンボサを二つ入れて、渡してくれた。
「メルシーボクー!シュクラン!(ありがとう)」
更に道を進むと、背の高い男性が、ぬっと現れて、手を口元にやる動作をする。食べ物か金をくれと言っているのだ。
自分ばかり得をしては申し訳ない気分になって、先ほどのサモサを渡すと、男性は無言で立ち去った。
道端にはヤギがたくさん屯している。こいつらは、イード(ラマダン明けの祭り)でご馳走になるのだろうか。
そうこうするうち Hotel Horseed についた。しかし、ホテルの前に座っていた人々は、ここにはレストランはないという。
「ラマダンだから、やっていないの?」
「いや、ここにはレストランはない。ホテルだけだ」
あれえ?
Google マップには、レストランの評価が書いてあるので、昔はあったのだろうか。
「この評価に書いてある Haniid(羊と米)というのが食べたいんだけど」
「よし、俺について来い」
ユースフと名乗った彼は、ムシュ通りに向かっていく。
「俺はソマリアで農場をやっていたんだ。そのあとエチオピアに行って、レストランをして……。エチオピアには何でもある。特に夢がある」
歩きながらユースフは呟くように語る。彼はきれいな英語を話す。どこでいつ、何のために勉強をしたのだろう。
「見てみろよ、この通りを。ゴミだらけだろう。住んでる奴らのメンタリティがダメなんだよ」
「物乞いをする子供たちに、ゴミを拾ってもらって、政府がそれを買い上げるとかすればいいんですかねぇ」
「片付けたって、またゴミを捨てるんだよ。メンタリティがダメなんだよ、メンタリティが。俺はガムを噛んだって、捨てる時は紙に包んで、ゴミ箱に捨てる」
何と言っていいか分からなかったので、僕は黙っていた。
問題が山積みのこの国を良くするためには、どこから手をつけたらいいのだろう。
この間会った日本人は、ジブチ人は誇り高いので、物乞いはしない、物乞いをしているのは難民たちだ、と言っていた。難民を保護する?誰のお金で?
国民ですら失業率が半分の国だ。難民が仕事を見つけるのは大変だろう。ジブチ人は、家族の中の誰かが稼いだ金で暮らせるかもしれないが,人の縁の弱い難民たちは、見知らぬ人に頼るしかなく……。
ユースフが連れてきてくれたのは、インディアンレストラン Le Santal の斜め向かいにある Chabwa というレストラン。
ユースフは僕に座れというと、入り口や厨房の人と色々話している。どうもオーダーをしてくれているようだ。
程なくして、炊かれたご飯の上に、ローストした山羊肉の乗ったものが運ばれてくる。
「これ、カブリじゃないの?」
「そう!カブリだよ!」
「もしかして、Haniid とカブリって同じもの?」
「イエス、イエス!食べたら 1000 フラン払えよ」
そう言ってユースフは颯爽と去っていった。本当に親切でやってくれたのだと、有難い気分になる。
それにしても、 一人前 1000 フランで食べられるのは手軽である。昨日は一頭 2 万フランだったので、おいそれと行くのは難しい。
カブリ、いや、Haniid は、意外なほど美味しかった。米はあっさりとしているが肉の出汁が効いていて、肉はうまみが生きている。脂は柔らかく、甘く、味わい深い。
焼き立てで皮がパリパリしていた分、昨日の方が美味しかったが、なかなかどうして、この店も少人数ならば十分選択肢に入る。
あえて言うなれば、単調なので、昨日のスパイスが欲しかった。
と、入口から生きた子やぎを二頭抱えた男性が入ってきた。
料理をたいらげていると、厨房の方で、めぇ、めぇと悲しい声がする。命を頂くということは、こういうことなのだ。
ちなみに、出口で会計をしようとしたら、1250 フランだという。ユースフは 1000 フランだと言ったよ、と抗議したら、値段表を見せられた。
確かに 1250 フランと書いてあったので、謝ってちゃんと払った。
Chabwa:★★★★☆(新鮮で美味しいカブリが、一人分で食べられる。ユースフは同じくらい美味しい店をいくつか知っている、と言っていたので、星は四つ。ちなみにムシュ通りのあたりはカブリの店がいくつかある)
宿の近くに帰ってくると、「コニチハ~~」と声をかけられた。
「こんにちは!」
「あんた、アトランティックホテルの客だろ?」
「何で知ってるの?」
「おれはモハメッド。あそこの警備員だよ」
「あ、あ~~!ドアのところにいる人か!」
またモハメッドか、と思いつつ、握手をした。
しばらく立ち話をするうち、一杯飲むか、という話になって、すぐそばの Restaurant L'historil のテラスバーに行った。
「ここはオーナーが日本人なんだ。奥さんがエチオピア人でね。でも和食は出してない。イタリアンとエチオピア料理の店だよ」
僕がエチオピアビールのサンショルジュを頼むと、モハメッドはラム入りコークを頼む。
「あんた、ムスリムじゃないの?」
「ラマダンももう終わるからね!」
モハメッドは、四ヶ月になる双子の父親だという。
「そりゃ、かわいいね」
「うん、かわいい。ただ夜寝てくれなくてね……」
「だろうなぁ。ダブルだしね。奥さんの話、よく聞いてやんなよ。でないと一生言われるぜ」
と、適当に知ったようなことを言っておいた。
宿に帰って、荷物をまとめる。
運転手がなかなか来られなかったので、ジブチ空港に着いたのは 22:00 過ぎだった。
チェックインやパスポートコントロール、セキュリティチェック、それぞれ混んでいて一時間くらいかかってしまった。
フライトが 23:20、搭乗締め切りが 23:00 なので本当にギリギリ。誰だよ、ジブチ空港にはラウンジもカフェもないから時間を潰せないって文句を言っていたのは。そんな時間ないじゃんか。
ちなみにラウンジはあるらしいのだけれど、普通に行くと見当たらない。現地の人は「ラウンジにはバスでないと行けない」と言っていたけれど……。
JIB: Djibouti–Ambouli International Airport Lounge Access (Djibouti) | LoungeBuddy
機体は 777-300。機内はほぼ満席。Wifi はない。
今回のフライトは 7 時間半。機内食は抜きにして、がっつり寝る方針。眠れるかな……。
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